レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

クルマ ニュース

投稿日: 2024.03.19 15:23
更新日: 2024.03.19 16:20

航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。“海”をテーマにしたデザインの電気自動車/BYDドルフィン試乗

レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る


クルマ | 航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。“海”をテーマにしたデザインの電気自動車/BYDドルフィン試乗

 モータースポーツや自動車のテクノロジー分野に精通するジャーナリスト、世良耕太が『BYDドルフィン』に試乗する。中国の企業であるBYDが日本向けに発表した第2弾のEVモデル『ドルフィン』。“海”をテーマにした内外装、愛らしいイルカをモチーフにしたデザインが随所に盛り込まれたコンパクトEVモデル、ドルフィンの魅力を深掘りしていこう。

* * * * * *

 公式ホームページによると、BYDは「電気自動車をはじめとした、『eモビリティ』をつくっている会社」だ。BYDとは、Build Your Dreamの頭文字をつなげたものである。広東省深圳に本拠を置く中国の企業で、電気自動車の製造と販売は数ある事業分野のひとつ。リチウムイオンバッテリーは自前でつくっている。というより、電池メーカーとしての歴史のほうがクルマづくりより古い。

 日本向けには、2023年1月にATTO 3(アットスリー)を発表。同年9月には、今回紹介するDolphin(ドルフィン)を発表した。ドルフィンはATTO 3の弟分的な存在である。ボディサイズは全長4290mm、全幅1770mm、全高1550mm、ホイールベースは2700mmだ。

航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。海をテーマにしたデザインが特徴のコンパクトEV/BYDドルフィン試乗
BYDドルフィン
航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。海をテーマにしたデザインが特徴のコンパクトEV/BYDドルフィン試乗
リヤスタイルも目を引くもの。幾何学的なリヤコンビネーションライトを水平ラインで結んだユニークなデザインとなっている。
航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。海をテーマにしたデザインが特徴のコンパクトEV/BYDドルフィン試乗
BYD ATTO3
航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。海をテーマにしたデザインが特徴のコンパクトEV/BYDドルフィン試乗
BYD ATTO3

 ちなみに、ホンダ・ヴェゼルのボディサイズは全長4330mm、全幅1790mm、全高1590mm、ホイールベースは2610mmである。ドルフィンのサイズ面でのウリは、5ナンバー枠を飛び出してはいるけれども、1800mmを30mm切っていること(10mm、20mmの違いが大きい)。機械式立体駐車場に入るサイズであることだ。

航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。海をテーマにしたデザインが特徴のコンパクトEV/BYDドルフィン試乗
ホンダ・ヴェゼル

 バッテリー容量の設定はふたつあり、標準モデルは44.9kWhで一充電走行距離は400km、ロングレンジは58.56kWhの容量を持ち、一充電走行距離は476kmである。メーカー希望小売価格(税込)はロングレンジが407万円、標準モデルは363万円だ。

 標準モデルは実に絶妙な値付けで、CEV(クリーンエネルギー自動車)補助金の交付を受けると、実質的に300万円を切る(ロングレンジも補助金対象車だ)。コンパクトクラスの電気自動車としては、コスパの高いモデルといえる。

 価格を抑えるために装備を切り落としているか、というとそんなことはなく、実に充実している。アダプティブクルーズコントロールをはじめとする先進運転支援システムはひと通り装備しているし、自動緊急ブレーキシステムを備えるなど予防安全技術も万全だ。

 車内のミリ波レーダーが生体を検知した場合、ライトの点滅とホーンで車外に知らせる幼児置き去り検知システムも標準で装備する。

 先に安全運転サポート系の機能について感想を述べておくと、やや介入過多で制御やアラートがわずらわしく感じるシーンがあった。このあたり、日本国内の販売元であるBYDオートジャパン側も認識しているようなので、(制御の)アップデートで改善されるはずだ。

 “ドルフィン”のネーミングから想像できるように(?)、この電気自動車はエクステリアもインテリアもイルカをイメージしてデザインされている。

 例えば、室内側のドアノブは、イルカのヒレがモチーフだ。ピンクの主張が強いカラーコーディネートと合わせ、ファンタジーの世界である。

航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。海をテーマにしたデザインが特徴のコンパクトEV/BYDドルフィン試乗
インテリアも滑らかな曲線を多用した構成。中央には12.8インチのタッチスクリーンを備えている。
航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。海をテーマにしたデザインが特徴のコンパクトEV/BYDドルフィン試乗
ドアハンドルは、イルカの胸ビレを模したデザイン。
航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。海をテーマにしたデザインが特徴のコンパクトEV/BYDドルフィン試乗
エアコン吹き出し口は、波をモチーフにしたデザイン。

 ドライバーの目の前にあるメーターは、シンプルなデジタル表示で機能優先に見えるが、センターのタッチスクリーンがボタン操作ひとつで回転するのは、遊び心だろうか。いや、これも機能を考えてのことか。

 マップを表示する際は縦にすると、進行方向が広く表示されていいかもしれない(そもそも12.8インチの大画面なので、横でも問題ないが)。

 操作系も特殊で、ダイヤル式のシフトセレクターはセンターコンソールに設置されている。その左側にあるスイッチはドライブモードの切り換えで、NORMAL、ECO、SPORTに切り替えが可能。

 中央にあるハザードスイッチの右は回生ブレーキの強弱(Standard↔Larger)の切り替えスイッチである。輸入車だがウインカーレバーは右。ヒョンデの電気自動車(アイオニック5、コナ)と同じだ。

航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。海をテーマにしたデザインが特徴のコンパクトEV/BYDドルフィン試乗
メーターディスプレイは交通標識の情報やナビゲーションパイロットの走行状況などを表示する。
航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。海をテーマにしたデザインが特徴のコンパクトEV/BYDドルフィン試乗
BYDドルフィン
航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。海をテーマにしたデザインが特徴のコンパクトEV/BYDドルフィン試乗
パーキング、リバース、ニュートラル、ドライブなどを選択するドライブセラクターは、ダイヤルを回してセレクトする方式。

 技術的にはバッテリーに特徴がある。電気自動車に一般的なリチウムイオンバッテリーを搭載しているのだが、正極活物質にリン酸鉄リチウム(LFP)を採用しているのだ。ニッケル、マンガン、コバルトの三元系(NMC)を採用するのが一般的。LFPは材料コストが低く、ゆえに魅力的な車両価格が実現にひと役買っている。

 LFPはNMCに比べて体積エネルギー密度が低いのが弱点とされるが、長くて薄い形状にした独自のブレードバッテリーを採用することにより空間効率を高め、バッテリーパックとしたときの体積エネルギー密度でNMCと同等の性能を確保した。一方で、安全性に関してはNMCより有利とされる。

 電動パワートレインも先進的だ。モーターとインバーター、減速機を一体化した3 in 1のユニットは聞かないこともないが、ドルフィン(ATTO 3も同様)はなんと、8 in 1の電動パワートレインシステムを搭載する。

 モーター、PDU(高圧配電モジュール)、BMS(バッテリーマネジメントシステム)、DC-DCコンバーター、減速機、OBC(オンボードチャージャー)、VCU(車両コントロールユニット)、MCU(モーターコントロールユニット)が一体化されている。

 8つのユニットを一体化したことにより、重量は15%、体積は20%低減したという。熱の制御や振動など、解決すべき課題のハードルが高いことは容易に想像できるが、BYDは(外から見ると)難なくそれをやってのけている。

航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。海をテーマにしたデザインが特徴のコンパクトEV/BYDドルフィン試乗
BYDドルフィン

 で、乗ってどうかというと、電気自動車としては至ってフツーだ。ファンタジーなエクステリア/インテリアとは対照的に無味無臭な乗り味である。ネガティブな意味で言っているのではない。

 電気自動車としてはケチのつけようがない。アクセルペダルを踏み込むと応答高く力を出してくれるが、過敏ではなく、物足りなくもなく、ちょうどいい。

 暴力的な加速は望むべくもないが、シームレスに加速し、周囲の流れをリードするくらいの芸当は期待できる。静粛性がウリの電気自動車であっても、遮音・吸音を施していないと騒々しいクルマになるものだが、その点、ドルフィンはよくできていて、電気自動車らしい静粛性の高さは充分に感じさせてくれる。

 曲がる、止まるに関しても取り立てて不満はない。乗り心地も良く、硬くないし、安っぽい動きや音もない。実用的な電気自動車としてよくできている、というのがドルフィンに対する総評だ。見た目の主張は強めだが、日常の道具としての個性が控え目なので、バランスがとれてちょうどいいのかもしれない。

航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。海をテーマにしたデザインが特徴のコンパクトEV/BYDドルフィン試乗
フロントシートはヘッドレスト一体型のパワーシート。助手席の背もたれは75°以上の可動域を実現する。フロントシートはヒーター付き。
航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。海をテーマにしたデザインが特徴のコンパクトEV/BYDドルフィン試乗
BYDドルフィン
航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。海をテーマにしたデザインが特徴のコンパクトEV/BYDドルフィン試乗
BYDドルフィン
航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。海をテーマにしたデザインが特徴のコンパクトEV/BYDドルフィン試乗
BYDドルフィン
航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。海をテーマにしたデザインが特徴のコンパクトEV/BYDドルフィン試乗
BYDドルフィン
航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。海をテーマにしたデザインが特徴のコンパクトEV/BYDドルフィン試乗
BYDドルフィン
航続距離400kmで、実質300万円を切る価格。海をテーマにしたデザインが特徴のコンパクトEV/BYDドルフィン試乗
BYDドルフィン


関連のニュース