ヒーブユニットは、サイドポッド内にマウントされた遠隔スプリングも作動させている。つまり、このユニットの一部は複動式の油圧システムになっていて、一連のバルブやアキュミュレータを介して、遠隔スプリングを押し縮めるようになっているのだ。こうしたシステムを使えば、単純なスプリングとダンパーだけでは実現できない、理想的なスプリングの効果をサスペンションに持たせることができるというわけだ。
このヒーブユニットには、イナーターも組み込まれている。これは2007年のフェラーリとマクラーレンの「スパイゲート」で知られるようになったコンポーネントで、当時は「Jダンパー」と呼ばれていた。機構を簡単に説明すれば、金属製の円筒形のマスをヒーブユニットの動きに合わせて回転させ、マスの加減速に際して生じる慣性の効果を利用して、通常のダンパーではできないような制御を行うというものだ。
メルセデスは昨年から、2つに分割されたヒーブユニットを使っていた。ひとつはコンベンショナルなコイルスプリング式のもので、その下に遠隔スプリングに作用する油圧ユニットがあったのだ。しかし、過去数戦では一体型のユニットが試され、ハンガリーとドイツでは実戦でも使用されている。この新しいタイプのヒーブユニットは、外部の人間に見られないようにカーボンファイバー製のカバーの下に収められていた。
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