スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアが、3度のMotoGPチャンピオン、ホルヘ・ロレンソがF1とMotoGPの歴代チャンピオンたちをたたえたミュージアムに潜入した。
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■ホルヘ・ロレンソのモータースポーツ愛
ホルヘ・ロレンソを一目見て、彼のことを自分のキャリアしか気にかけない現代的レーサーのひとりだと誤解する人もいるかもしれない。
ロレンソは己のパフォーマンスに焦点を当て、外からの影響を無視し、自らを偉大な存在にしたこのスポーツの歴史をまったく気にかけない気難しい男だという印象をしばしば受ける。
妙な話だが、その印象は間違いではない。スポーツマンである以上、輝かしい成功を収めることに集中する必要があるからだ。
しかし、スペインとフランスの間に位置するアンドラという小国を旅してみると、ホルヘ・ロレンソが実際にはモータースポーツを愛しているということがわかる。
アンドラはタックスヘイブン(租税回避地)であり、歴史的に見てもバイクレーサーたちの間で非常に人気が高い。かつてのスーパーバイク世界選手権(SBK)のレースウイナーであるサイモン・クラファーやゲイリー・マッコイもそこで暮らしており、その他にもルベン・チャウスやカール・マガリッジなどの有名ライダーたちもアンドラで生活している。
そんなアンドラに、ロレンソがMotoGPとF1に対する愛を示す素晴らしいミュージアムがある。
このミュージアムでは『ワールドチャンピオン・JL99のコレクション』として知られており、ロレンソの私蔵品が一般の人も楽しめるように展示されている。だが単なる展示というだけでなく、そこではふたつの世界最高峰レースの歴史を強烈に体験できるのだ。
ミュージアムはアンドラ南西部に位置する都市、アンドラ・ラ・ベリャにあり、MotoGPとF1それぞれの歴史に残る名ドライバー、ライダーたちが使用したレーシングスーツやヘルメットなど、ロレンソが所有する記念品が一堂に会している。
ミュージアムに入ってまず目に飛び込んで来るのが、洗練されたカフェテリアだ。カーボン調のテーブルとドゥカティ・レッドの内装、そしてピットウォールを模したカウンターが来場者を出迎える。至る所にあるスクリーンには、MotoGPとF1の映像が映し出され、会場の一角には両カテゴリーのマシンのシミュレーターが設置されている。また会場には、アイルトン・セナやバリー・シーンといった偉大な選手たちを特集したスペースもある。
モータースポーツの歴史を巡るタイムマシンのドアが10ユーロ(約1300円)で開くのだ。