レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

F1ニュース

投稿日: 2014.07.29 00:00
更新日: 2018.02.17 01:52

【レースの焦点】オーバーテイクで切り開いた命運


 もしも、これが優勝争いだったら――毎レース繰り広げられる名勝負に、そんな溜め息も聞こえてきた今シーズン。ハンガロリンクではファンの夢が叶った。

 首位フェルナンド・アロンソの0.8秒後方にルイス・ハミルトン、その0.6秒後方にダニエル・リカルドが迫ったのは、70周レースの61周目。3台の間隔が1秒以内になったのは64周目。直後の2コーナーでハミルトンのアウトに並んだリカルドは、若干ブレーキをロックさせたためラインが膨らみ、一度のトライでメルセデスを仕留めることはできなかった。それでも、2周後には再度、同じ場所で挑戦――今度はアウト側でグリップを維持しつつ、ハミルトンに対してフェアであれる分だけ先行したのを確認すると即、少し左にラインを採りながら3コーナーへのアプローチを有利にした。

 オーバーテイクがほとんど不可能と言われるコースでも、オーバーテイクを創造するリカルドの才能は素晴らしい。レッドブルの長所を活かして抜けるポイントを必ず見出し、勝負に持ち込み、見事なコントロール能力で自らの道を切り開いていく。ひとつのブレーキ、ひとつのコーナーだけでなく、複数のコーナーを使ってオーバーテイクを築き上げる技には、知性と攻撃性がバランス良く表れる。

 レッドブルに有利なはずのハンガロリンク、予選を4位で終えたときには、リカルドもけっして楽観的ではなかった。インターミディエイトのスタートでふたつポジションを落としたことによって、レースはさらに難しくなった。幸運は、8周目のセーフティカーのタイミング。トップ4台がピット入り口を通過した後であったため、ドライタイヤに交換した後は首位に立った――それでも、リカルドが“幸運"を享受したのはこの1度きりで、3ストップ作戦を優勝につなげるベースは彼自身が築いた。長い第3スティントはソフトを履いて31周。アロンソとハミルトンが2度目の――2ストッパーである彼らにとっては最後の――ピットインを終えた後、首位を取り戻したリカルドは2位アロンソと同じペースを維持し、スティント終盤には間隔を詰められながらも54周目までステイアウトした。