更新日: 2018.02.17 01:30
連載:長谷見昌弘レースドライビング教本「序章」
序章:長谷見昌弘が語るレースドライビング
モータースポーツは複雑なスポーツだ。道具を使うスポーツは大方そうだが、自動車というある意味能動的な道具を駆使するところに複雑で難しい要素が存在する。しかし、ドライバーもエンジニアもチーム監督もその複雑さを理解し、難しさを克服しなければ勝つことは出来ない。
エンジニアは自動車という機械を構成する部品の性質を知り、各部の動きなどの理論を理解することで、優れた性能の自動車を設計・開発することが出来るはずだし、理想的な動きを導き出すことも不可能ではないはずだ。近年はコンピュータを導入することで自動車は微細な動きまで解析出来るようになり、それがレースで速く走る自動車を作る助力になっていることは周知の事実だ。
問題はドライバーである。世の中に自動車を速く走らせる人間はいくらでもいる。しかし、速く走るだけではレースには勝てないし、レーシング・ドライバーとは言えない。では、レースで勝つことの出来るドライバーは、勝てないドライバーとどこが違うのか? その理由を見つけていくのがこの連載のテーマである。
ドライバーは人間であり、コンピュータより遙かに複雑な動きをし、物事を理解する能力を持っている。つまり、自動車を速く走らせるため、レースに勝つためにはどうすれば良いか理解できるということだ。そこで当連載では、我が国一の理論派ドライバーとして長く活躍してきた長谷見昌弘に、レース・ドライビングの真髄を語ってもらう。ドライバーの視点で「レースに勝てるドライビング」を分析し、実践するための手助けになればと思っている。