レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

スーパーGTニュース

投稿日: 2015.10.08 00:00
更新日: 2018.02.17 10:49

VivaC 86 MC、トラブルを抱えながらSUGOで優勝


VivaC team TSUCHIYA
レースレポート
2015SUPER GT Rd.6 スポーツランド菅生

■日時:2015年9月19-20日
■場所:スポーツランド菅生
■監督:土屋春雄
■チーム:VivaC team TSUCHIYA
■車両名:VivaC 86 MC
■ゼッケン:25
■ドライバー:土屋武士/松井孝允
■リザルト:予選2位/決勝1位

職人魂<チームワーク優先
一番良い結果を出すための選択。
職人魂炸裂! レース屋集団というスパイスは、チーム最大の武器
されど、行き過ぎた情熱は最大の弱点ともなる。

 前回、前々回と私、土屋武士の苦悩を打ち明けさせていただきましたが、今年もっとも優勝のチャンスがあると考えられている菅生戦を前に、さらに覚悟を決めてチームの環境整備をしました。これはイコール、春雄監督の行動を「制限する」ということです。次から次に浮かび上がる監督のアイデアを封印し、マシンには手を加えずに今ある現状のマシンのパフォーマンスを最大限引き出すことを優先。また、チームスタッフの働く環境やサーキットに入ってからの雰囲気を整備していくということに重点を置き準備をしました。タイ戦まではテストのデータを元にどちらかというと「武士より」の運営でしたが、それ以降のレースでは「監督より」で進んできたことで、私の危機管理センサーが振り切り寸前になったことが決意するきっかけになりました(前回までのレポートを読んでください(笑))。具体的にはタイラウンドの足まわりに戻すというところから軌道修正。これもたくさんの皆さんの期待に応えるため、一番良い結果を出すために、チームオーナーとして“最善のチョイス”をしたまで。それももっともシンプルな選択でした。

 これまではマシンに手を施さなければならない箇所がたくさんありましたが、その対策品もデリバリーされてきたことで、基本的に他のマザーシャーシー86(MC86)と同じ仕様で持ち込むことにしました。“職人”としては、他と同じことをすることが死ぬほど嫌いなわけなので、監督は面白くなさそうでしたが(苦笑)、その職人魂が炸裂する場面はここ、菅生戦では無いという判断。まずこの一戦。何を優先にしたらいいのか?を突き詰めた結果です。そしてそれはさっそく功をなし、ガレージでの作業は非常にスムースに行き、私のストレスも大分減少しました。やっぱりチームのみんながストレスなく動ける環境でないとミスもでるし楽しくない。どんなに素晴らしい技術があったとしても、扱っている人間がストレスを感じてしまえば宝の持ち腐れになると思っています。

 私が掲げているモットーの一つに「ONE FOR ALL, ALL FOR ONE」というものがあります。学生時代ラガーマンだったのですが、この言葉がすごく好きでチームをまとめていくうえでいつも意識していることです。これが基本。今回はみんなで優勝という一つの目標に向けて準備ができた感触があって、ようやくレースを戦う状態になったかなという感触がありました。もちろん、ここまで出来の悪いマシンをしっかり走れるように多くの箇所を改造し対策してくれたのは、職人である監督のなせる技ということは紛れもない事実。ハードを扱うスペシャリストがいてこそ、レース屋集団は存在していられるということも忘れてはいません。でもそれがチームワークを崩してしまう要素になるのであれば、徹底的に潰さなければならないということも事実。

 ハードとソフト、機械と人間、プライドと思いやり……相反するものが上手に融合していかなければ、結果はついてこない。相反する要素を融合させることは死ぬ気で取り掛からないとすぐに崩壊します。結合すれば最強。つまり、崩壊も最強も紙一重。それでもこのトライアルは私がやらなくてはならないもの。次世代に職人の技術や取り組む姿勢をつながなければ、本質を見失った世界になってしまう。とにもかくにも頑固一徹な職人にそのことを理解し納得してもらうことが、今後のチーム運営をしていくためにも絶対に必要なことなんだと、自身にも言い聞かせ、何としてでもやり遂げる覚悟でサーキット入りしました。