更新日: 2024.11.07 17:20
apr GR86 GT 2024スーパーGT第8戦もてぎ レースレポート
2024 AUTOBACS SUPER GT Round 8
開催地:モビリティリゾートもてぎ(栃木県)/4.801km
11月2日(予選)
天候:雨 コースコンディション:ウエット 観客数:1万2300人
11月3日(決勝)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:3万人人
荒天に阻まれるも、見えてきた新たなセットアップの方向性
例年では最終戦として組み込まれるもてぎラウンドだが、今年は第5戦鈴鹿大会が台風の影響で12月7日〜8日に延期されたことで、7戦目としての開催となった第8戦もてぎ。
ストップ&ゴーサーキットのもてぎは、リヤのトラクション性能が高いMR(ミッドシップエンジン・リヤドライブ)車両が得意としており、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両にとっては苦手とするサーキットだ。さらに同じFR車両の中でも、GTA-GT300車両はFIA-GT3車両に対し、もてぎの短いストレート区間での最高速が10km/h近く落ちる。
劣勢にあることは否めないが、30号車apr GR86 GTは今回、永井宏明の提案もあり、織戸学と小林利徠斗のコンビで参戦。これまでとは方向性が異なるセットアップを試し、次戦の鈴鹿、さらには来季へのステップアップにつなげる一戦に臨んだ。
公式練習/23位 11月2日(土)9:00〜10:35
11月2日の土曜日は、台風21号から変わった低気圧が日本列島を縦断。西日本では大雨災害への警戒が必要なほどで、関東地方も激しい雨が予報された。同じように雨に見舞われた第6戦SUGOでは、午後の公式予選がキャンセルになった場合、公式練習のタイムがスターティンググリッドになる可能性があることを事前に通達されていた。
しかし悪天候のなか、GT500車両15台、GT300車両27台の計42台が一斉に走行する公式練習でのアタックはリスクをともなうことになる。今大会は事前に公式練習のタイムがスターティンググリッドを決めるものにはならないことがチームに通達されていた。
午前9時からの公式練習は、ヘビーウエットのコンディションで始まった。持ち込みタイヤはドライもウエットも数戦前に仕様を決めなければならず、今年は異常な暑さが続くなど、例年以上にタイヤ選択を難しくさせている。30号車は2スペックのウエットタイヤを持ち込んでいたが、いずれもヘビーウエットで路面温度が低いコンディションにはマッチする仕様ではなかった。
公式練習はソフト側のウエットタイヤを履いて小林が走行。タイヤを温めることができず、発動しないタイヤでハイドロプレーニング現象が起きてしまったため、リスクを回避するために4周のみの走行に留めた。タイムは2分14秒126で23番手。午後の予選に向けて、不安を残してしまった。
公式予選 11月2日(土)
Q1/27位 14:00〜14:43
Q2 L15/10位 15:13〜15:23
総合結果24位
雨は午後になっても止むことはなく、一時は公式予選を決勝日の朝に延期することも検討されていたが、予選開始時刻の14時時点で雨脚が少し弱まったこともあり、スケジュールどおりにGT300のQ1が行われた。
今季のGT300の予選は、前大会までの成績に基づいてQ1を2グループに分け、各組の上位8台がQ2の上位グループ、9位以下が下位グループに組分けされ、さらにQ1とQ2の合算タイムで順位を決定する方式を採用する。しかし、第5戦SUGOからQ1の組分けを廃止、全27台が20分間のQ1を一斉に走行する形式に変更となった。
第5戦SUGOは雨により公式予選がキャンセルとなり、第6戦オートポリスではやはり雨によって予選日の走行がすべて中止になって決勝日朝に30分間の計時予選方式に変更されたため、新しく採用された予選方式が初めて採用されることとなった。
30号車のQ1は小林が担当。公式練習の時間帯に比べれば雨量は少し減っていたが、危険なレベルにあったことに変わりはなかった。公式練習でハイドロが厳しく車両のセッティングを詰めることもできず、厳しい予選となった。しかも途中で赤旗が出てアタックを阻まれたこともあり、アタックらしいアタックもできず、タイムは2分7秒455で最下位となってしまった。
Q2はL15(Lower 15th)に織戸が出走。Q1での状況、小林からのインフォメーションにより、タイヤの内圧とリヤウイングの角度をアジャストするが、大きな躍進とはならなかった。それでもQ1よりは雨量が減ってハイドロも少しはましになり、織戸のタイムはL15で10番手となる2分3秒428を記録し、総合ではQ1から3つポジションを上げて24位となった。
永井宏明選手
「想定以上の雨量と低温に対して、タイヤ選択のチョイスがまったくズレていました。そのなかでクラッシュせず無事に予選で走り切っただけで今日は良しです。明日は晴れ予報なので、キッチリ走り切り、今の課題に対して開発の一歩を踏み出したいです」
織戸学選手
「小林選手は雨でも速いから期待していましたが、無線では悲痛な声が聞こえていましたね。僕が走ったQ2では雨量が少なくなっていましたが、それでも危険だなと感じるレベルでした。クルマを仕上げることができず、タイヤもマッチしているとは言い難い状況でしたが、ちょっとアンパイに行き過ぎたというか、本来のポテンシャルを出し切ることはできませんでした。クルマを壊さないために、無茶はできなかったというのが正直なところです」
小林利徠斗選手
「公式練習は、本来であれば予選に向けてクルマのセットを作りたかったのですが、ハイドロが酷くて、そういうレベルで走ることはできませんでした。セットも公式練習でできなかったことを、Q1でやらざるを得ない状況でしたね。僕のアタックは赤旗が出たり、前のクルマに引っかかったりとかもありましたが、それがなくてタイムを上げられたとしても、上位グループに進むタイムを出すことはできなかったと思います。コンディションとタイヤがマッチせず厳しい一日でした」
金曽裕人監督
「想定以上に雨量が多くハイドロも酷く、路面温度も低く、タイヤを温めることすらできない状況でした。公式練習が始まって15分で、ウエットコンディションでは勝負権がないと分かりました。同じヨコハマタイヤでも速いところがいるわけだから、僕たちがこのコンディションにマッチするタイヤを持ち込めなかったというのが結論です。ドライバーのふたりには、危険のないようにアタックしてもらうしかありませんでした」
決勝レース(59周)/19位 11月3日(日)13:07〜15:00
前日の荒天から一転、晴天に恵まれた決勝日。レース開始時には気温21度、路面温度29度まで上がり、11月とは思えないような陽気になった。
30号車は今大会の目標に、これまでとは違う方向性のセットアップを試すことを掲げていた。当初の予定では公式練習で試し、セットアップを詰めていくはずだったが、雨の公式練習ではそれができなかった。この週末、初めてドライで走るウォームアップ走行を経て、20分間では時間が足りないなかでも新たなセットアップを探って決勝に挑む。また、タイヤ無交換もプランニングしていた。
スタートドライバーは織戸。ウォームアップ走行ではクルマのバランスが良く、実際、序盤のペースは好感触だった。しかし、6周目から7周目、8周目から9周目にかけて2度のFCY(フルコースイエロー)が出た後、フロントタイヤのグリップ感が薄れ、アンダーステアが強くなってしまう。
前車のアクシデントやピットのタイミングで17番手まで順位を上げた21周目にピットに入るが、織戸はタイヤを交換することを無線でチームに伝えた。給油とタイヤを4輪交換してコースに戻った小林は、速いラップを刻んでいく。しかし、3〜4周したところでタイヤのピークグリップはなくなっていた。
第1スティントと同じように、フロントタイヤのグリップが失われていく。小林はその後の30周以上を、タイヤを労る走りに徹するしかなかった。そして19位でチェッカーを受けた。
30号車は今季からフロントタイヤを小径化しており、まだタイヤ開発とそれに合わせたクルマのセットアップは途上にある。今回はいつもと違うアプローチのセットアップに挑んだが、走行時間が少ないなかで正解を導き出すことはできなかった。しかし、苦しい状況でもノートラブルで走り切り、データを収拾。今回得た経験値は、間違いなく今後の糧となる。
永井宏明選手
「タイヤも開発過程で、どうしてもマシンを合わせこむ時間が足りないです。安定して、バランスが崩れないレースに強い状態にしなければ、上位はまだ見えない状況です。次の鈴鹿が最終戦となりますが、どこまで詰められるか前向きに改善あるのみです」
織戸学選手
「ウォームアップ走行ではタイヤの温まりもクルマのバランスも良くて、実際、決勝の序盤は今年で一番キマッている感じでした。でも、FCYが2回出た後は前のペースについていけなくなってしまいました。今年はフロントタイヤが小さくなって、重量も重くなって、そこでの前後バランスがまだ合わせ込めていない感じですね。タイヤもクルマも少しずつ良い感じにはなっているし、今後の方向性は見えていると思います。あとはそれにトライできる走行時間がほしいですね」
小林利徠斗選手
「決勝は後半つらくなるかもしれないけど、それでもタイヤ無交換にチャレンジする予定だったのですが、それを叶えることはできませんでした。僕に代わってからも、一発のグリップはあったんですけど、すぐにフロントがグリップダウンしてしまいました。我慢の週末にはなってしまいましたが、常に成長していきたいと思っていますし、GT500との混走での走らせ方や駆け引きという部分では、今回も身に付けることができたと思います」
金曽裕人監督
「タイヤの進化とクルマの合わせ込みというのは、まだまだ課題ですね。そのなかでも、織戸選手の細かいセッティング能力に助けられ、小林選手はしっかりとクルマをコントロールして安定している。ピットワークも良かったし、いま持っているもののなかでは、みんながベストを尽くせたと思います。次の鈴鹿は永井選手のホームコースで得意としているし、クルマもマッチしているので、上位を目指します!」