F1と共に、GP2も今年最後のラウンドを迎えた。金曜日の19時10分からナイトセッションとして行われた予選は、気温24度、路面温度29度というコンディション。この予選で、ARTの伊沢拓也は13番手、カンポスの佐藤公哉は16番手となった。
伊沢は、話を聞くなり開口一番、「ソチに次いで、今年2番目に良い予選だった」と語る。ソチでは、予選でトップから0.2秒遅れの3番手グリッドを獲得した伊沢。決勝でも絶妙のスタートで一時は先頭に躍り出たものの、セーフティカー出動のタイミングに阻まれ、勝利の可能性を失ってしまっていた。
アブダビでの難所は、低速90度コーナーが多数配置されているセクター3。チームメイトのストフェル・バンドーンに、約1秒の差を、このセクター3だけで付けられてしまっている。
「小さいコーナーがダメなんです。ソチの感覚で走ると、やっぱり少しズレがある。クルマの向きを変えるポイントが、自分の考えとは少し違うんです。今年1年かけて良くなったんですが、これは身体に染み付いたモノなんでしょうね」
その原因は、温度に敏感な、ピレリタイヤの扱い方にあるようだ。今年のピレリタイヤは、ターンインに最適な温度があるという。マシンを曲げる時にそれ以上低くても、それ以上高くても、上手くグリップしてくれない。
「タイヤがグリップするポイントが分からなくて、ちょっと突っ込んだところで曲がってしまうんです。そうすると、ドカンとグリップがなくなってしまう」
中段からのスタートに伊沢は、「この位置からなら、ソフトでスタートして、早めにタイヤを変えてセーフティカー待ちですね。ソチと逆のパターンです」と、決勝の戦略を明かしてくれた。
一方の佐藤は、ピットとの間にミスコミュニケーションがあり、2本目のタイヤでアタックを行うことができなかったのが、16番手に沈んだ主な理由。「もう一周できる時間があるぞ」と、無線で伝えられたと認識した佐藤だが、ピットからは実際にそのような指示は飛んでおらず、アタックラップに入る前にチェッカーフラッグが降られてしまったという。ただ、クルマにはまずまずの手応えを感じているようだ。
「クルマはソチからまあまあ良くて、なんとかグリップしています」
佐藤の課題は伊沢とは異なりセクター2。セクター1と3は上位陣と遜色無いタイムを記録したものの、セクター2だけは「ちゃんとグリップしてますし、頑張ってはいるのですが……タイムが出ないんですよね。僕だけじゃなくて、チームメイトも同じような傾向にあるようなんです」。
佐藤の決勝での課題は、何を差し置いてもスタートだ。本人も「僕はスタートがダメなんで……」と、正直に語る。確かにこれまでの佐藤は、スタートに失敗し、オープニングラップで順位を落とすことが多い。それに追い打ちをかけるように、後方からスタートするマシンは、強引な速度でコーナーのインに飛び込み、ノーズをねじ込んでくる。接触も少なくない。良いスタートを決め、それをいかに封じ込めるかが、佐藤の次の課題である。
GP2のアブダビ・ラウンド、第1レースは18時40分(※現地時間/日本時間23時30分)から行われる予定。タイヤはブリスターが発生する例はあるようだが、ラップタイムに与える影響は、それほど大きくない。それよりも問題はグレイニング。グレイニングをいかに抑えるドライビングをするかという点も、勝負の重要な分かれ目になろう。
今季の残りレースは、土曜日のレース1を含めてわずか2戦。最後のラウンドでの、ふたりの渾身の走りを、ぜひこの目に焼き付けておきたい
なお、ポールポジションを獲得したのは、ARTのストフェル・バンドーン。2番手には、ソチで2014年のチャンピオン獲得を決めたジョリオン・パーマーがつけた。