更新日: 2023.06.11 15:48
iCraft 2023スーパー耐久第2戦富士 レースレポート
2023年5月26日~28日 富士スピードウェイ(静岡県)
予選:曇り/ドライ 入場者数:5000人
決勝(土):晴れ/ドライ 入場者:2万2000人
決勝(日):曇り/ドライ 入場者数:1万9800人
OHLINS Roadster NATS(マツダ・ロードスターND5RC)
南澤拓実/岡原達也/金井亮忠/野島俊哉/石井達也/山野哲也
鈴鹿での大クラッシュから復活! 接戦を制しST-5クラス2位を獲得
前戦の第1戦鈴鹿大会で、他車からの接触を受けて大クラッシュを喫したOHLINS Roadster NATS のマツダ・ロードスター。マシンは全損状態で使えるパーツがほとんどない状況だった、今回富士24時間レース参戦のために、ゼロからマシンの製作を開始した。金井亮忠を中心にNATSの学生らも作業を手伝い、なんとか大会の1週間前に完成し、レースウイークの火曜日から本格的な走行に入っていった。
また、クラッシュの際に乗車していた山野哲也は、脳震盪、全身打撲、肋骨骨折の診断を受けたが、富士24時間に間に合わせるべく、体調回復とリハビリに励んだ。レースウイークに入っても、目眩の症状が残っていたが、木曜日の専有走行で、改善が確認され、決勝レースでも走行を担当することが決まった。レギュラーメンバーの金井と野島俊哉に、今回は南澤拓実、岡原達也、石井達也も加わった6人体制で、チームが今季最大の目標に掲げている“富士24時間レースST-5クラス優勝”を達成するために、⾧丁場の過酷な戦いに臨んだ。
公式予選
通常なら、山野がAドライバーを担当していたが、第1戦のクラッシュの影響で直前まで参戦できるかが明確になっていなかったこと。また今年から導入されているAドライバーハンデの裁量がどうなるのかも、直前まで決まらなかったこともあり、今回の第2戦では南澤がAドライバー、岡原がBドライバーを務めた。
予選日の数日前にシェイクダウンをし、セットアップを煮詰める作業についても十分な時間を得られなかったのが、ふたりのドライバーとも限られた時間で最大限の走りをみせ、タイムアタックを行った。南澤が担当したAドライバー予選では2分07秒624を記録しクラス4番手につけると、続く岡原担当のBドライバー予選も2分08秒429で5番手につけた。両ドライバーのタイムを合算した総合順位で72号車はクラス5番手を獲得した。
24時間という⾧丁場のレースを考えると悪くない順位。何より、新しく組み上げたマシンが、ここまでトラブルなく走れているということころで、チーム全体が少しずつ自信をつけながら、決勝レースへの準備を進めた。
決勝レース
決勝レースがスタートする27日(土)は、朝から青空が広がり、初夏の暑さも感じるなか各車がグリッドについた。ST-5クラスの5番手から決勝レースに臨む72号車は、金井がスタートドライバーを担当した。今回も、Aドライバーハンデが課せられており、決勝レース中に1回のドライブスルーを消化しなければならないのだが、これを1周目に完了。クラス11番手まで順位を落としてしまうが、同じクラスの車両が周りにいないなかで、淡々とペースを上げて追い上げていった。
金井は順調に周回を重ね、開始45分のところでひとつ順位を上げると、その後もポジションアップに努めた。ライバルの車両よりも最初のピットストップを遅めにしていたこともあり、一時は2番手に浮上した72号車。48周目にピットインし、岡原にバトンタッチした。
着々と周回を重ねていく走りが功を奏し、開始2時間の時点では7番手まで浮上した72号車。岡原もミスのない走りを心がけ、92周目に2度目のピットイン。今回はFドライバー登録となっている山野哲也に交代した。レース序盤からスティントを担当することになった山野だが、怪我からの復帰という不安要素を全く感じさせない走りを披露。2分09秒台の安定したペースで周回し、トップの車両との差を少しずつ詰めていった。
陽が暮れて、富士24時間レース恒例の花火が上がっている時間帯に、このレース最初の波乱が起こる。ST-Zクラスの車両がダンロップコーナーでクラッシュし、セーフティカーが導入された。ちょうど72号車は、山野のスティントを終えて次のドライバー交代に向けた準備に入っていたのだが、チームはこのタイミングでメンテナンス(レース中に10分以上のピットストップを一度行わければならないルール)を消化することを決断。マシンをガレージに入れて、ブレーキの交換や、マシン各部のチェックを行った。
通常ならレースの折り返しとなる12時間前後のタイミングで行うものなのだが、上位進出のために開始5時間という早めの段階で消化することを決断した。これにより、順位は下げてしまうものの、夜間走行の間に粘り強く走り続け、ポジションを挽回していった。
深夜の時間帯になるとアクシデントも多発。アクシデントによりコース上でST-4クラスのマシンが炎上したことで、2度目のセーフティカーが導入された。さらに開始から12時間を過ぎた日曜日の午前3時30分ごろには、ダンロップコーナーで1台が激しくクラッシュ。すぐにセーフティカーが導入されるがガードレールの修復が必要という判断から赤旗が出され、レースは約1時間30分に渡って中断された。
午前5時に再開されると、72号車はクラス2番手に浮上していた。早めにメンテナンスタイムを消化していたことが、良い方向に働いていたのだ。混乱続きだった夜間走行では、主に野島、南澤、石井らが担当し、ポジションアップに努めた。
この時点でトップの17号車マツダ・デミオとの差は1周以上ついていたのだが、相手に何か不測の事態が起きれば、逆転のチャンスも十分にあるだけに、チームは引き続き気を引き締めて周回を重ね、ピット作業もミスなくこなしていた。
しかし、後方からは65号車マツダ・ロードスターが接近してきており、日曜日の午前中も数秒差での接戦を展開することとなった。一度は3番手に下がるも、ゴールまで残り2時間を切ったところでアンカーの山野に交代し、2番手を奪取した。これに対して65号車陣営も必死に食い下がり、残り1時間を切ったところでは、コースの各所でサイド・バイ・サイドのバトルを展開。会場に詰めかけたファンを魅了した。
残り35分のところでは、2台が同時に最後のピット作業を実施することとなった。タイヤ交換などが手間取ってしまえば、ポジションを明け渡すことになる難しい状況だったが、NATSの学生たちをはじめチーム全員が迅速な作業でマシンを送り出し、2番手死守に成功。最後はチームの大黒柱である山野がラストスパートをかけて、2番手の座を安泰なものにし、15時00分に592周でチェッカーを受けた。
これにより、OHLINS Roadster NATSはST-5クラスのランキング2位に浮上した。首位との差は13ポイントと、中盤戦での逆転が十分可能な位置につけている。新しいNATSの学生メンバーが加わり、さらにパワーアップしたチームで、今季の目標であるシリーズチャンピオン獲得に向けて邁進していく。
南澤拓実
「⾧いレースでしたが、チームとしては、鈴鹿からずっとクルマを作り続ける日々が続いて、山野選手も今回のために体調を合わせてもらいました。本当に、チーム全体で獲った2位表彰台だと思います。これからもチームがシリーズチャンピオンを獲れるように応援していきたいです」
岡原達也
「僕は2年ぶりのS耐でした。クルマに慣れるのに時間がかかって、チームに迷惑をかけてしまいましたけど、最後は山野選手をはじめ、他の皆さんと一緒にがんばって、2位を獲得できたのは本当に良かったなと思います。クルマに関しても、チームと学生たちが鈴鹿を終えてからイチから作ってくれましたが、全くトラブルなく走り切ることができて、素晴らしい週末でした」
金井亮忠
「鈴鹿から2カ月という短い期間でしたけど、みなさんの協力でマシンが仕上がりました。レース前の火曜日にシェイクダウンという状態でしたが、大きなトラブルもなく、決勝まで進んでくることができました。学生も頑張ってくれましたし、みなさんのおかげだと思っています。次は優勝を目指して頑張ります」
野島俊哉
「本当に⾧い24時間でした。本当にチームのみんなが、最後まで集中していたのが大きかったです。特にNATSの学生さんたちは、今回が初レースだったのですが、ひとりひとりがすごく真剣に取り組んでいましたし、それを支える先生方やメカニックの方々の熱意がすごかったです。そういういったものも、今回の2位につながったのではないかなと思います。本当にすべての方々に感謝したいです」
石井達也
「まずは、24時間レースを完走できたということで、関わって支えてくださった皆様に感謝したいと思います。鈴鹿でいろいろあったなかで、マシンが変わったことや山野選手の体調など、不安要素は色々ありましたけど、無事に2位を取れたのが良かったなと思います。1位になれなかったのは悔しいですが、そこは来年リベンジできたらなと思います」
山野哲也
「みんなにとっては、この2カ月間は苦しかったと思います。僕自身もジムカーナは出られたけど、それ以外の仕事ができない状態が続いていて、24時間レースも走れるか分からないというところから準備を進めていました。クルマに関しても、イチから作らなければいけない状態で、今回から新しい学生メンバーになったなかで、なんとかレースウイークに間に合わせてくれました。一言で凄いことだなと思います。結果的に優勝はできませんでしたが、2位表彰台を獲れたこと、チーム全員が揃ってここに戻ってくることができて、新しいクルマとともに戦い抜いたという達成感は、優勝したような気分です。みんなの努力が実った、良い大会だったと思います」
猪爪俊之監督
「ちょうど山野選手のスティントが終わるタイミングでセーフティカーが出て、そこで『今やっちゃおう』と決めてメンテナンスタイムを消化しました。やはり、最後までブレーキが持つのか不安な部分はありましたけど、みんながちゃんと持たせてくれました。ここに来るまで、NATSの学生達も講師陣もゴールデンウイーク返上でクルマを製作してくれて、NATSのOBも休みに駆け付けてくれて、富士24時間の参戦にむけて、本当に頑張ってくれました。何より山野選手がドライバーとして戻ってきてくれて、成績もちゃんと出してくれて、本当に良かったです。優勝はできませんでしたけど、次回への楽しみにしたいです」