事件はサーキットの外でも起きている。もちろん、サーキットの中で起きているのは言うまでもない。水面下で蠢くチーム、ドライバー、グランプリにまつわる未確認情報を調査員が独自に調査。送られてきた報告書を公開する。
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 交通管理はF1の優先事項のひとつになりつつある。F1にとってこれが新しい重点分野になっている理由にはふたつの要素がある。ひとつには、F1が2030年までのカーボンニュートラル達成に取り組んでいることがある。毎日サーキットに4万台から5万台のクルマが乗り付けてくるイモラ、バルセロナ、シルバーストン、レッドブルリンク、ハンガロリンク、スパ・フランコルシャン、モンツァといったヨーロッパのコースは、この目標を達成できないと決まったようなものなので、F1は観客に近郊の都市でクルマを降りて、コースへはバス移動を強制する計画を立てようとしている。

 それを達成するためには、F1は地元自治体の全面協力を取り付けるとともに、十分な台数の電気バスを用意してもらう必要がある。少なくともイベントごとに80人乗りのバス100台を用意し、各6回運行すれば、サーキットにいる全員を運ぶのに十分だろう。これを受け入れてもらうには、ある程度の説得が必要だ。

 ふたつ目の理由は、F1関係者が朝コースに入るのが難しくなっていることに関係している。ブダペストやスパでさえ、一部のドライバーはサーキットまでの最後の数kmを歩かなければならなかった。彼らは渋滞にはまったが、非常に多くのミーティングが設定されていることから、その日最初の約束に遅れる危険があったのだ。サーキットへの朝の交通量を大幅に削減すれば、誰にとっても状況は楽になるだろう。

 イモラやハンガロリンク、モンツァなど一部のサーキットには、代わりのアクセス道路がないために実現が容易ではないとしてもだ。ドメニカリがヨーロッパの他の主催者に、ザントフォールトの交通整理の仕方を学ぶよう促しているのはそれが理由だ。彼はオランダのイベントは、ヨーロッパの他のすべてのサーキットにとって完璧な青写真であると示した。

■レッドブルとフェラーリの溝を埋まらず

2023年F1第13戦ベルギーGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2023年F1第13戦ベルギーGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

 フェラーリは、ロイック・セラがメルセデスとの契約を終える前に仕事を始められるよう望んでいる。メルセデスのパフォーマンスディレクターである彼は、事実上2025年の開始まで仕事をすることができない。

 フェラーリのチーム代表であるフレデリック・バスールによるチーム再編において、セラは主要な要員とみなされているため、バスールはセラを早目にリリースするよう友人のトト・ウォルフと交渉しているが、セラをメルセデスでの契約上の義務から早く解放してもらうには、メルセデスが要求する分野について譲歩を受け入れなければならないだろう。

 メルセデスは予算制限のコントロールといったレギュレーションの明確化や、より重要なことには2026年のパワーユニット(PU)レギュレーションを現状維持するために、有力な賛同者を得たいと考えているのだ。

 一方でレッドブルのテクニカルディレクター、ピエール・ワシェのフェラーリ移籍については、2026年の始めより前に実現することはないだろう。フェラーリとレッドブルの関係は、フェラーリのスポーティングディレクター、ローレン・メキースがアルファタウリの新チーム代表になることが今年の春に発表されたことで、史上最悪の状態になっている。

 レッドブルは、バスールや他の上級スタッフに事前に連絡する礼儀すら持たずに発表を行ったのだ。2026年のPUレギュレーションに関して、両チームはバリケードを挟んで反対側にいる。交渉の見通しは立っておらず、ワシェがフェラーリのテクニカルディレクターになるのは今からほぼ30カ月後のことになるだろう。

■2025年のF1カレンダー

2023年F1バーレーンGP
2023年F1バーレーンGP

 ステファノ・ドメニカリは、自身に課した期限内になんとか来年の24レースからなるカレンダーを確保したが、彼はすでに2025年を見据えている。来年末には現在のレースのうち4レースの契約が終了することになる。イギリス、ベルギー、イタリア、日本は、2024年で既存契約が終了するが、ドメニカリはシルバーストン、モンツァ、鈴鹿の主催者との交渉を直ちに始める用意がある。

 一方でスパ・フランコルシャンは順番を待たなければならない。歴史的なこのレースは、フランスGPの中止(2023年)と、2024年の代替レースが不足していることから、今年と来年は契約が延長されたのだ。しかしドメニカリは、カレンダーを再編成しなければならないだろう。

 2025年はイスラム教のラマダン(断食)期間が2月28日~3月29日とさらに早く始まるため、バーレーンとサウジアラビアはカレンダーの後方枠が間違いなく必要になる。そのため、3月の2週目にメルボルンで開幕される可能性があり、シンガポールにはその1週間後の枠が検討されている。そしてバーレーンは4月初めのレースを受け入れており、日本と中国もこれに追随する一方で、サウジアラビアはシーズン終盤へ移る。今年のアブダビ、カタールのように、10月の初めに移ることになるだろう。

 今のところ、シンガポールGPの主催者は、たとえ1年であっても従来の9月の枠を移すことに抵抗している。しかし主要人物のオン・ベンセンは自身が法的トラブルに直面していることから、彼らの交渉における立場はそれほど強くなく、少なくとも2025年は変更を受け入れなければならないかもしれない。

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