Eri ito

 こうしたレースで、コンディションを味方につけるのがうまいのが、マルク・マルケス(グレシーニ・レーシングMotoGP)である。サンマリノGPで、アラゴンGPに続く優勝を飾った。

 ぽつぽつと雨が落ちてきたとき、マルケスはこう考えた。

「何粒かの水滴がスクリーンや路面に落ちてきて、僕はアタックすると、そしてリスクを冒すことを決めたんだ」

 前戦アラゴンGPで優勝という復活を遂げたマルケスは、今大会のサンマリノGPでも好調で、上位のライダーと戦えるペースがある、と考えていた。誤算だったのは、予選だろう。マルケスはQ2で転倒を喫して9番グリッドスタートだったのだ。

「予選のミスのあと、チャンスがあるとすればこういうコンディションだけだと思っていた。1周目、僕とエネアは(ブラッド・)ビンダーの後ろからスタートした。そして、たった3、4周の間に、ペコとマルティンは差を広げ始めていた。そのときに、『今がリスクを冒すときだ。失うものはない』と思ったんだ。これがうまくいった。こういうコンディションではリスクを冒すとクラッシュがつきものだけど、今回は走り続けられたんだ」

 ここで思い出されるのは、2023年の日本GPだろう。ホンダで苦しいシーズンを送っていたマルケスは、このときもグリッド上でスクリーンに落ちた雨粒を見て「よし、いってみよう」と心を決めたという。レースは赤旗終了という形で終わったが、3位を獲得したレースだった。

 マルケスは複雑だったり、難しかったりする状況に、勝機を見出すことができる。もちろんそのような状況で戦えるという確信があってこそのことだ。そうした決断と、迷いなく決断したところに向かうことができるのもまた、マルケスの強みだろう。

 レースはフラッグtoフラッグのコンディションではあったが、マルケスには「通常のコンディション」で「通常のグリップの通常のサーキット」だったサンマリノGPの週末で、速さがあった。マルケスはそうした週末が「今後のレースにとって、すごく重要なこと」だと語り、自信を深めている。アラゴンGPと、サンマリノGPの決勝レースではコンディションを味方につけた形となったが、「通常の」コンディションの決勝レースで優勝する日も、そう遠くはなさそうだ。

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