更新日: 2018.06.26 16:12
昇り調子のドビジオーゾ。苦労人の初王者獲得なるか?/ノブ青木の知って得するMotoGP
またドゥカティは、自社に有利にコトが運ぶよう参戦レースにおいて政治力を遺憾なく発揮する傾向が強い。今のMotoGPマシンで使用が義務付けられている共通ECUも、もともとドゥカティが使っていたもの。
共通ECUが義務付けられた当初は、ドゥカティに若干のアドバンテージがあったのも確かだ。だが、それも微々たるものだったし、今や各チームともに共通ECUを使いこなし始めている。ドゥカティの政治力も、やっぱりランキングトップの要因とは言いにくい。
つまりマシン面で言えば、空力カウルや共通ECUのアドバンテージはほとんどないようなもの、なのだ。やはりパッケージ全体としてのまとまりの良さが好成績を呼んでいるのだろう。そして、パッケージを作り込んだのはドビの地道な努力。それがようやく報われつつあるというワケだ。
■ドビジオーゾの真価が問われる後半戦
それにしても、連勝するとはドビの頑張りも本当にスゴイ。ここ2、3年、シーズン序盤こそ勢いがあっても終盤になると尻つぼみになる、という展開ばかりだったが、今年は何か吹っ切れている感じがする。冒頭に「運」と言ったが、こればかりは自分ではどうすることもできないものだ。しかし、ドン底まで落ちた時もくさることなく頑張り続けてきたドビだからこそ、今、運の女神が微笑んでいるのだろう。
このままドビが逃げ切れるかどうかは、残念ながら分からない。最初に思わず「なんと!」と言ってしまったように、「まさかドビが……」という思いが拭えないのだ。実力はあるし、苦労人でもあるし、個人的に好きなライダーでもあるので、ぜひともチャンピオンを獲得してほしいが、残り4戦ぐらいになってチャンピオンを具体的に意識し始めた時、とたんにプレッシャーがのしかかり難しさが急増するだろう。
逆に、終盤になればなるほどチャンピオン経験者──現在ランキング2位のマルク・マルケス(ホンダ)が有利になってくる。
ただ、ドビが4勝を挙げてめきめきと自信をつけているのも確か。むしろ、ホンダは第12戦イギリスGPでエンジンが壊れたり、ヤマハはバレンティーノ・ロッシが骨折したりと、まわりの方が不確定要素も多い。運と、自信と、デスモセディチGP17のトータルバランスの良さが果たしてどこまで通用するか、しかと見届けたいところだ。
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■青木宣篤
1971年生まれ。群馬県出身。全日本ロードレース選手権を経て、1993~2004年までロードレース世界選手権に参戦し活躍。現在は豊富な経験を生かしてスズキ・MotoGPマシンの開発ライダーを務めながら、日本最大の二輪レースイベント・鈴鹿8時間耐久で上位につけるなど、レーサーとしても「現役」。