日曜日の優勝はこれまでにおけるマルケスの最高の勝利だったと言えるだろう。それは24歳の彼がマイク・ヘイルウッドやケーシー・ストーナーの最高峰クラスでの優勝記録をもうすぐ越えようとしていることを物語っている。
暗殺者のような攻撃、ナポレオンのような知的戦略、そして大胆さ、日曜日のマルケスはこうした属性すべてを最大にする必要があった。数年前はマルケスが急降下爆撃を行う方だったかもしれないが、今回の彼はおそらく先頭集団で最もマシンをコントロールしていたライダーだっただろう。攻撃と防御を同時に行い、その間ずっと何かを終盤まで取っておこうとしていた。
彼はタイヤが温まっていく序盤の周回で衝動的に出ることなく、タイヤを気遣いながら嵐をやり過ごし、チャンスを掴むタイミングを待った。なぜなら早すぎるとフィニッシュの前にタイヤが温まりきらないからだ。
マルケスの最高峰クラスでの35回目の優勝は、2年前のフィリップアイランドと違い戦術的な最高傑作の内容だった。
「2015年も同じ戦略を採った。レースの間は冷静になり、最後に攻撃を仕掛けるんだ」とマルケスは言った。
■自信をなくしたドビジオーゾ
オーストラリアGPでのドビジオーゾはどうだったのか? フィリップアイランドは素晴らしいレーストラックだ。見事な高速コーナーは多くのライダーたちに好まれているが、涼しい春は嫌なサーキットになり得る。
12カ所のコーナーのうち7カ所は全開で曲がるロングの左コーナーで、タイヤの左側に高熱を(しばしば過剰なほどに)生じさせる。しかしタイヤの右側はほとんど使われないため、涼しいコンディションでは右コーナーでバイクが不安定に感じることがある。もちろんそうした右コーナーでライダーはハードにプッシュし、タイヤに熱を持たせようとするが、度を越してしまいかねないのだ。
マルケスとドビジオーゾはそのことをよくわかっている。昨年マルケスは右コーナーの4コーナーにブレーキングしながら進入する際転倒し、首位から脱落した。2014年は、右コーナーの10コーナーに向けてブレーキングした際にクラッシュして首位から転げ落ちた。10コーナーでのクラッシュは土曜日の午後にまさにドビジオーゾがやってしまったことだ。

限界を超えてプッシュすることを好まないドビジオーゾは自信を失った。レース2周目で右コーナーの1コーナーに向けてブレーキングしたときもドビジオーゾはまたヘマをし、大回りして順位を11位から20位に下げることになった。
右コーナーはドビジオーゾだけの問題ではない。日々進歩しているドゥカティの最後の大きな弱点は中速コーナーでのコーナリングだ。フィリップアイランドの高速コーナーでもそれは顕著に表れており、彼はすべてのコーナーで貴重なコンマ数秒を失っていた。
ドビジオーゾはまだタイトル争いから外れてはいないが、彼が超えなければならない山は非常に険しく思える。
タイトルを勝ち取ったものは誰でもそれに値する者なのだ。もしマルケスが5年で4度目となるMotoGPタイトルを獲得したら、彼が現在において世界で最も偉大なライダーであることに疑いの余地はない。マルケスがこのあと数年にわたって健康を維持し、好成績を出したら、私たちは彼を史上最高のライダーだと評価するかもしれない。
