ロレンソがセパンでチームオーダーに従ったかどうか、本当のところはまだわからない。ロレンソはバイクのダッシュボードに表示された、ドビジオーゾに1番手を譲るようにという『マッピング8』のメッセージを見ていなかったと主張している。
私はときによってライダーの話す内容を信じないことにしている。ライダーたちは秘密を隠そうとするものだからだ。今回については、私はロレンソを信じている。というのも、第13戦サンマリノGPでトップ走行中にクラッシュした原因が、マッピングの変更操作をしていたことだったからだ。

ロレンソはこのクラッシュで、集中をコースからダッシュボードにそらしてはいけないと学んだのだろう。それに、ロレンソは私たちに何度も教えてくれた。うまくチームメイトの助けになればいいね、と。
チームオーダーのコードメッセージはともかくとして、ドビジオーゾがチャンピオンを獲得するためにはレースに勝つしかなく、そして同時にマルケスがミスを犯したりクラッシュしたり、バイクに問題が起こるなどのトラブルが起こらなければならない。
ドビジオーゾがレースに勝ったとしても、マルケスは11位以内でフィニッシュしさえすればいい。ドビジオーゾができることは、いつもどおり自分のベストを尽くすことしかないのだ。
「僕らはリラックスしているよ」と、ドビジオーゾはセパンでのレース後に語った。「今週、僕らはリラックスしていた。バレンシアでも同じように力を入れすぎないでいくよ」
マルケスがタイトルを獲得すれば、ドビジオーゾは失望するだろう。しかし、ドビジオーゾは失望しすぎることはないと私は思う。ドビジオーゾは、今季6勝を挙げている。これは、これまでドビジオーゾが最高峰クラスに参戦してきた2016年までの9年間で挙げた2勝という勝利数を上回るものなのだから。