MotoGPマシンはレギュレーションにより最低重量が157kgと定められている。コレ、GPマシンとしてはものすごく重い。かつて2ストロークの500ccエンジンだった頃は115kgなんて時代もあったほどだから、途方もなく重い。要するに、いくら軽量化を頑張ろうにも、軽くしようがないのだ。
そこでワタシとしては、先にあげた「しなり」に着目しながら話を進めたい。
実はワタシ、1995年10月にスポーツランドSUGOで行われたTBCビッグロードレースに参戦したんです。カジバの500ccGPマシン『C594』で。この時のC594はカーボンとアルミのハイブリッドフレームを採用していたのだが、これがまた全ッ然しならない! 接地感の「せ」の字もないというシロモノだった。リザルト? 参加9台中ビリですよ! カッチカチのフレームに手こずった苦い記憶しかございません(笑)。
最近では、2009~2010年にドゥカティがMotoGPマシンにカーボンフレームを採用した(2010年モデルはカーボンスイングアームにもトライ)。翌2011年にバレンティーノ・ロッシが加入すると、ロッシは「こりゃいかん!」とフレームをアルミにしてしまった。いろいろな理由があっただろうが、主にはカーボンの「カッチカチのしならなさ」にNGを出したのだろうとワタシは思う。
「じゃあダメじゃんカーボン!」と思うでしょう? これがそうとは言い切れないのだ。
今は素材の改良が進み、しなるカーボンもあるのだ。だからスイングアームに採用することで、適度にしなり、接地感も損なわないながらも、アルミよりバネ下重量を軽くできる……かもしれない、というワケなのだ。
「じゃあイイじゃんカーボン!」と思うでしょう? これがそうとは言い切れないのだ(しつこい)。
というのは、新世代カーボンスイングアームの先鞭を切ったホンダも、現時点では「これが正解!」と断定しておらず、コースやライダーの好みによってアルミ製と使い分けている。

もうひとつ注目されているカーボンフロントフォークも、基本的には同じ狙いだ。アウターチューブをアルミからカーボンにしたものだが、こちらも軽さとしなりが両立できるようになったからこその採用だろう(フロントフォークもしなりが重要!)。
そして「コースやライダーの好みによってアルミ製と使い分け」という点でも、カーボンスイングアームとカーボンフロントフォークは共通している。つまり、正解がない。いまだ方針が定まらず、といったところだ。