もちろん、すべてはタイヤにある。ブリーラムでのプレシーズンテスト後、ミシュランはコースレイアウトと熱帯の気温に耐えうる特別なリヤのスリックタイヤを製作した。そのタイヤはより硬く、耐熱性のあるカーカス(ケーシング)を備えていた。これがヤマハの驚くべき速さの秘密だった。
ミシュランタイヤは、2009年から2015年にMotoGPで使用されたブリヂストンタイヤとは正反対だ。ブリヂストンはフロントのスリックタイヤの方が優れているのに対し、ミシュランはリヤタイヤの方が優れているのだ。したがってリヤタイヤのスペック変更はヤマハ勢にとって大きな効果があった。ビニャーレスとロッシだけでなく、ヨハン・ザルコとハフィス・シャーリンの両名もこの数カ月で最高のレースをしたのだ。

「バイクのバランスに少々の変更を加えたが、リヤタイヤがコーナリングにおいて大きな助けになったのは確かだ」とビニャーレスは語った。
「とても奇妙だ。なぜならアラゴンで僕はバイクを傾けられなかったが、今週末僕たちが一番速かったのは、コーナリングスピードがすべてのセクター2と3だった。バイクは正常なヤマハのバイクのように走れていた」
結果として硬いリヤのカーカスのおかげで、ヤマハ勢はより高いエッジグリップとドライブグリップを得ることができ、徐々にではあるが、スロットルとともにコーナーを通過でき、ほとんどホイールスピンを起こすこともなかった。
MotoGPを密接に追いかけている人にとっては、このことは驚きであるかもしれない。2016年は、ミシュランが公式タイヤサプライヤーになった最初のシーズンだった。アルゼンチンGPのフリー走行でスコット・レディングがタイヤをパンクさせたことを受けてミシュランがより硬い構造にタイヤを切り替えるまでは、ホルヘ・ロレンソは絶好調だった。

「最初のミシュランタイヤでは、僕はとても速かった。プレシーズンテストでは他のレーサーよりも1秒速かったんだ」とロレンソは振り返った。
「でもミシュランがタイヤをより硬くしたら、僕は遅くなってしまった」
しかしビニャーレスとロッシはハードなリヤタイヤのおかげで、ブリーラムでは先頭集団で走れていた。このことは理解しがたくないだろうか? 実はそうでもない。
ヤマハは、速度を出すために高いエッジグリップを必要とする、コーナリングスピードのバイクだ。したがって、最適な接地面を生み出すために、完全に傾いた時のカーカスの適正な柔軟性が必要だ。だからリヤタイヤが柔らかすぎたり、硬すぎたりということは十分あり得るのだ。