更新日: 2018.11.15 20:37
ヤマハ中須賀が全日本ロード“絶対王者”たる理由。目指すは「優勝のさらに上」
「レースは事前の準備がすべて。レースウィークにサーキットに入った時点で、勝負は決まっている。常日頃からどれだけ本気でレースに取り組んでいるかが重要なんです」と中須賀。「自分が若手のモノサシになれれば」と中須賀は言うが、それはライディングのことだけを指しているのではない。レースに対する本気の心構えも含めて、レーシングライダーとしてのあり方を示しているのだ。
もうひとつのモチベーションは、「もっと上に行きたい」という彼自身の情熱だ。中須賀は、「2位や3位を狙っているようでは、2位にも3位にもなれない。優勝を狙っていては、勝つことはできない。勝つためには、優勝のさらに上を目指さなければ」と言う。
全日本ロード最高峰クラスで8度もタイトルを獲得し、日本最大のバイクレースである鈴鹿8時間耐久ロードレースでも4連覇を成し遂げている中須賀にとって、ターゲットにすべき冠はもはや日本にはない。彼にとっての「さらに上」は、世界だ。
「世界に出て戦いたいという気持ちは、常に自分自身の中にあります」と中須賀。
「なかなか実現できずにここ(日本)に留まっている状態だけど、世界を追い求めているからこそ今の結果があると思っています」
ヤマハMotoGPマシン・YZR-M1の開発ライダーを務めている中須賀は、MotoGPにスポット参戦を繰り返してはいる。だが、世界選手権へのフル参戦経験はない。
「年齢的に厳しいことは分かっている」と37歳の中須賀は自認する。それでも世界を目指して努力を続けるのは、より高い目標を設定し、そこに向けて努力することこそが自分を高める唯一の道だということを知っているからだ。
だが、そういった世界への熱意すらも、「次世代のための足がかりになればいい」と中須賀は考えている。
「世界を目指してチャレンジし続けていることで、僕はMotoGPにもスポット参戦できている。それが少しでも若い選手たちのチャンスにつながったり、(世界への)道を作ることになればいいなと思ってます」
現在唯一の日本人MotoGPライダーである中上貴晶の名を挙げながら、日本人ライダーが少しでも世界で活躍する姿を見せることが後続のためになる、と中須賀は語った。
自分のための戦いという次元に、もはや彼はいないのだ。彼が望んでいるのは、若手の踏み台になることだ。彼が待っているのは、自分を踏み倒す力強い若手の登場だ。Team HRCで念願のファクトリー体制を獲得した28歳の高橋巧。Kawasaki Team GREENで最強の呼び声が高いZX-10RRを走らせる28歳の渡辺一馬。そしてYAMAHA FACTORY RACING TEAMのチームメイトで同じYZF-R1を駆る23歳の野左根航汰──。彼らが死に物狂いで中須賀に勝負を挑み、全力で王座を奪い取り、世界へと大きく羽ばたくその時を、中須賀は待ち望んでいる。