更新日: 2018.12.15 01:45
“小さな巨人”ペドロサ「MotoGPマシンに乗るのは無理だと思っていたが……」/特別インタビュー後編
文/富樫ヨーコ
「ダニが引退するのはすごく寂しいですね」と小合氏は語る。
「今年も開幕まで乗れていたんです。でも第2戦のアルゼンチンGPで(ヨハン・)ザルコと接触して転倒して右手の付け根にひびが入ってしまったんです。これまで何度もタイトル争いに絡んでいたのに獲れなかったというのが心残りだし、悔しいです。ダニの方がもっと悔しいと思いますけど……」と小合氏。
2001年から2018年マレーシアGP終了時までで54勝を挙げているペドロサ。しかし、2018年の優勝回数は未だゼロだ。もてぎで8位、フィリップアイランドは転倒リタイア、セパンでは5位に終わっている。
以前、もてぎは得意なコースだと語ったペドロサは2015年に“侍”と書かれたヘルメットを被って日本GPに臨み、優勝した。それ以来、日本だけではなく全戦で“侍”ヘルメットを被るようになったペドロサ。“侍”にはどのような思いが込められているのだろうか。
「2001年から何度も日本に来ている。日本人の心や文化に触れて、そのスタイルが気に入ったんだ。侍の謙虚で強いところが好きなんだ」
侍が好きだと語るペドロサ。もてぎでは熱狂的なファンが“侍”マークを身に着けてペドロサの姿を追っていた。
■鈴鹿8耐、そしてバレンシア
もてぎで取材した時点ではペドロサがKTMのテストライダーになるという話は出ていなかった。だから私はペドロサに『来年の鈴鹿8耐に出る予定はないの?』と質問した。それを聞いてペドロサはちょっと困った顔をしてこう答えた。
「8耐参戦は現時点ではノーだ。8耐のことは250ccライダーだったころから雑誌で読んだりして注目していた。MotoGPに上がってから一度出たいと思っていたけど、チャンピオン争いをしていたからチャンスがなかった」
この記事が掲載されるころには最終戦バレンシアGPも終わっている。バレンシアにもペドロサファンは大勢集まってくるだろう。ペドロサ最後のレース。“侍”と書かれた小旗を持ってバレンシアに詰めかけるファンの熱狂は遠く離れた日本にいても想像することができる。
「バレンシアでレースが終わったあと、泣いてしまうと思う?」ともてぎで聞いたとき、ペドロサは「答えるのが難しい」とボソっと答えた。その時点ではまだ4戦残っていたから一戦ずつ集中して戦っていこうと考えていたのだろう。あるいはバレンシアのレース後のことなど考えたくなかったのかもしれない。
最終戦バレンシアGPに関して小合氏は次のように語ってくれた。
「ダニとは最初のうちはプロの仕事に徹するという関係だったのですが、ずっと一緒にやっているから、今では何でも言える仲間になっています。だからダニが引退してしまうのは本当に寂しいですね。バレンシアでは泣いてしまうかもしれません。バレンシアは左回りのコースでダニは得意だから、絶対に勝ってほしいです」
バレンシアでペドロサは有終の美を飾ることができただろうか。侍ヘルメットを持って、表彰台の中央に立つことができただろうか……。
*ライディングスポーツ2019年1月号掲載