更新日: 2018.12.26 17:06
【ペドロサ独占インタビュー】MotoGP引退を決めた理由「自分でも気づかないうちに心のなかで決断していた」
ペドロサは2019年から2年間、KTMのテストライダーを務めることが発表されているが、MotoGPへの代役参戦やワイルドカード参戦する可能性はないときっぱり言う。
「まったくそのつもりはないよ。ただ、楽しみたいだけなんだ」
それは、MotoGPでレースをすることに、気持ちの整理がついていると言っているようにも聞こえた。
160cmという小柄な体格で、モンスターマシンとも称されるMotoGPマシンを操ってきたペドロサ。小柄だからこその苦労もあっただろうことは、想像に難くない。体格についての話になると、ペドロサは左手首を見せながら話し出した。
「みんなも知っていると思うけれど、たとえば僕は腕も細いほうで、(体格的に恵まれているライバルと比べて)ケガをしやすいことが多かった。これは精神的に受け入れるのが大変だったね」
「高速サーキットではマシンをすばやく左右に振ったりコントロールする必要があるわけだけど、その点でも苦労を強いられた。オーバーテイクや集団でバトルするときは、本当に大変だった。ただでさえ、大変な仕事をこなしているなかで走っているんだからね。それからタイヤの温度管理も難しかった。特に寒いコンディションでは、グリップを引き出すのが大変だったんだ」
本人が語るように、ペドロサはケガが多かった。ケガでチャンピオン争いからの離脱を余儀なくされたシーズンもある。2018年シーズンも、第2戦アルゼンチンGPでの転倒により右手首を骨折して手術を受けている。
それでもペドロサはロードレース世界選手権に参戦してから18年、MotoGPクラスでは13年間にわたりトップライダーとして活躍し続けた。MotoGPクラスではランキング2位を3度、獲得している。そのモチベーションはどこにあったのだろう。
「僕は自分の夢を追いかけ続けてきたんだ。達成できなかったこと、失敗したこと、悪いことに捕らわれてしまいがちだけれど、僕はとにかく自分の夢を追いかけ続けてきた。壁が高いと感じても、その先につかみたいものがある、と乗り越えてきたんだ。その繰り返しが18年間になったんだと思う」
『自分の夢』、それはMotoGPクラスのチャンピオンだったのだろう。その頂を目指して、ペドロサはひたすらに歩んできたのだ。そのキャラクターは決して派手ではないが、そんな姿がファンを惹きつける魅力のひとつでもあった。
最後に、「ペドロサ選手は引退して、ダニエルに戻るのですか?」と聞くと、ペドロサは破顔して笑い声を上げた。ペドロサの本名はダニエル・ペドロサ。MotoGPでは登録名として“ダニ”・ペドロサを称していた。
「どうかな」とペドロサは笑う。
「友達も僕のことを“ダニ”って呼ぶんだ。短くて呼びやすいからね。僕のことをダニエルとフルネームで呼ぶのは……そうだな……誰もいないね(笑)。個人的にはダニエルという名前は好きなんだけど、誰も呼ばないから、このままなんじゃないかな」
ダニ・ペドロサのMotoGPストーリーは2018年にエンドマークを迎えた。ロードレース世界選手権で通算54勝、通算表彰台獲得数は153回。MotoGPクラスではランキング2位を3度獲得した。その活躍が讃えられ、2018年のバレンシアGP前では史上29人目のMotoGP殿堂入りを果たしている。その記録とともにペドロサが残した鮮やかな活躍は、いつまでも見た者の脳裏に焼き付いていることだろう。