MotoGPマシンは毎シーズン進化していくが、見た目でそれがわかりやすい部分といえばカウル形状だろう。特に空力デザインはここ数年で劇的に変化しているように見えるが、そもそもカウルに求められる性能とは何だろう。

「たしかに空力に関しては、見た目が違うのでわかりやすいと思います。カウルの役割としては風の抵抗を減らすことにあります。ただ減らすだけでなく、マシンが浮き上がろうとする力にも対応しなくてはなりません。飛行機の逆ですね」
「もうひとつはハンドリングで、これが悪いとライダーは体力を消耗してしまいます。レース後半でへとへとになってしまっては、コンスタントに結果が出せなくなりますよね」
「また、冷却性能も大事です。しかし、風を入れすぎると抵抗になる。そこで、フロントのエアダクトのデザインにも工夫が求められるのです。簡単に言うと過給しているわけですが、その場所や形状が悪いと本来100欲しいものが50になってしまいます。これらの要素をトータルで考えています」
カウル形状の変化については、特にウイングに関わるレギュレーションが大きく影響しているようだ。ウイングの役割は主にハイパワー化するマシンのフロントリフトを抑止して加速につなげるために導入されてきたが、2016年にその危険性が指摘され、2017年からウイングレットの使用が禁止されている。
各メーカーとも工夫を凝らしているが、ホンダRC213Vもレギュレーション範囲内の大型ウイングレットや3枚羽タイプ、そして2017型のインナーカウル型を経て、2018型はF1のサイドポンツーンを思わせるブリスターカウルへと進化している。
「ウイングは前に着けるほど効果的ですが、やりすぎるとかえって抵抗が増えてしまうし、フロントを押さえるとハンドリングが悪化することもあります。ライディングの邪魔にならないようシミュレーションしていますが、数値化が難しい。もちろん実装テストも繰り返していますが、非常に難しい部分なんです。ライダーによっても求める要件が異なるからです」
「たとえばダニは体が小さいためマシンの上で動ける範囲が狭く、大柄なライダーのように体力でマシンを振り回すような走りはできないので、特に切り返しなどは軽快性を欲しがります。ハンドリングが重いとライダーの体力的な部分にも影響するわけです。マシンを見ればおわかりかと思いますが、マルク用とダニ用ではカウル形状が異なっています」


2018年シーズンは第5戦フランスGPから新型ウイングが投入された。そのタイミングや理由について、桒田氏はこう語る。
「シーズン前半戦は新しいマシンを使い込んで慣れていく時期なので、冒険はしたくない。特にウイングはシーズン中に一回しか変更できないので、どうせなら効果の高いものを(投入したい)と思っていました」
「当然ライバルチームも同じことを考えているので、なるべく早いタイミングで投入したかったのですが、ある程度効果がわかってきたところで、ということです。昔みたいに何でもポンポン変えられないので、難しくなりましたね」