更新日: 2019.02.03 06:01
ホンダ3冠の立役者、RC213V開発には「非常識にチャレンジすることも必要」/MotoGPインタビュー後編
かくして最高峰クラスでの2年連続3冠を達成したレプソル・ホンダ・チームだが、その原動力となったふたりのライダーについて、そして、最後にHRCライダーとして通算18年、MotoGPクラスで13年間の長きにわたってホンダ一筋で戦ってきたダニ・ペドロサに対する思いを桒田氏に聞いた。
「同じチームで同じマシンに乗るチームメイトは、お互いが一番のライバル同士なんですよ。よく言われるように、ダニはコーナー脱出からの加速、マルクはブレーキングが得意。ダニはコーナリングをまとめるのが上手く、軽量で小柄な体格を活かした旋回スピードが高くてコーナー立ち上がりでもスムーズに速度を乗せていけます」
「一方、マルクは常に限界を突破しようとするガッツある走りが魅力ですが、その分転倒も多くなる。というように、当初はダニとマルクの走りの方向性はぜんぜん違っていました。しかし、お互いをよく研究して走りも進化していくので、その差は少なくなっていったと思います」
「ダニにとって2018年は13年間のMotoGPクラス参戦で、初めて表彰台を逃したシーズンでした。勝てるときに勝てるマシンを、と思って開発にサポートに務めてきたつもりでしたが、あと一歩、我々の力が足りなかった。HRCで18年、これだけ長い間ホンダに貢献してくれたのにチャンピオンにしてあげられなかったことは、我々も残念に思っています」
「ライダーはマシンに安心感が持てないと限界を探りにいけないもの。その意味でどうだったのか……。ダニには申し訳ないことをしたと思います。引退の年なので是非(チャンピオンを獲得)と思っていましたが、残念です。しかし、最後までチームのために走り切って、最終戦(バレンシアGP)でもチェッカーを受けてくれたことをうれしく思います」
レギュレーションにも翻弄されたと桒田氏。2012年にMotoGPクラスの排気量がそれまでの800ccから1000ccに改定され、パワーが上がると同時にマシンも重くなるなど、小柄なペドロサにとっては年々不利な状況になっていった。ペドロサが持っているスキルはすばらしく、ツボにはまったときは誰にも止められない速さがあったが、せっかくのチャンスを負傷でものにできなかった不運もあった。
■ロレンソ加入により最強の布陣でタイトル獲得を誓う
「最高峰クラスで現役チャンピオンをふたりそろえたのは、チームとしては過去にもたぶん初めてではないでしょうか」と、桒田氏は新しいライダーラインアップで挑む2019年シーズンについて言及する。
既報のとおり、2019年シーズンはマルケスに加えてMotoGPクラスで3度のタイトルを獲得しているホルヘ・ロレンソが新加入する。現役のチャンピオン、それも脂が乗ったトップライダーふたりだ。
「ロレンソのライディングスタイルはまた(マルケスやペドロサとは)違うので、開発も一からになります。大変だとは思いますが、新たな次元へと我々チームとしての能力を高めるチャンスにもなり得ると思っています」
「マルクにとっても良い機会ですし、ロレンソにとっても(同様に良い機会)。双方が進化していければと思います。すでにロレンソのライディングを想定したマシンも用意して、バレンシアテストをこなしていますが、感触は良好のようです」
「ロレンソはコーナリングスピードが高いので、マシンの方向性としてはそれを活かす方向でしょう。課題も多いが結果的に良い方向にいくのではないかと思います。具体的には2019年シーズンが終わったときに、何かしらの答えが出せると思っています」
「ねらうは2019年も3冠、そしてライダーもワン・ツーで、タイトルを獲りにいきます。そうすればおのずとコンストラクターズタイトルも(獲得できる)。圧倒的に強いホンダをみなさんに見ていただくのが我々の使命であり、夢でもあります。それを実現できるよう頑張りますので、ぜひ2019年シーズンを期待してください!」
3年連続3冠獲得に向け、ホンダは再び2019年というシーズンに挑んでいく。