チャタリングは、コーナリングなどでフロントタイヤが細かく跳ねることにより生まれる高速の振動であり、バイクのさまざまなパーツ間で発生する高調波の不調和により引き起こされる。
チャタリングが起きるとバイクは減速してしまうし、最悪の場合クラッシュしてしまう。重いリヤカウルにマスダンパーをつける理由はシンプルだ。慣性モーメントは距離の2乗で増大するので、バイクの重心から離れた所に重さを追加すれば、チャタリングを防ぐのに大きく役立つのだ。
レース用バイクはチャタリングに極めて敏感である。2011年、ブリヂストンがシーズン中盤に柔らかいケーシングのフロントスリックタイヤに切り替えた際、RC212Vはチャタリングの大きな影響を受けた。おそらく、ケーシー・ストーナーがタイトル連覇のチャンスを失ったのはこのためだ。
■トップスピード向上により受けられるもうひとつの恩恵
ホンダはRC213Vのリヤカウルを完全に再設計する方向へ動いており、エキゾーストを片側に移し、“弁当箱”をドゥカティの“サラダボックス”のように中央に配置する可能性もある。レース用バイクのパッケージを製作するのは簡単なことではない。MotoGPの競争がより激しくなるなかで、各ファクトリーはより小さな面でのパフォーマンスの改善を追求している。

最後に、ホンダはトップスピードだけを求めているのではないことを知っておくことも重要だ。トップスピードの増大によりフロントタイヤへの圧力は減る。ライダーはタイムを補うために、極端に遅くブレーキをリリースしてフロントタイヤを傷めることがないからだ。
ホンダはフロントタイヤの温度を下げたいと考えている。マルケスと他のホンダライダーたちに、ソフト寄りのフロントタイヤで走るチャンスを与えるためだ。