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投稿日: 2019.05.28 08:00
更新日: 2019.05.28 14:17

令和によみがえったスズキ新型カタナ、開発秘話。最も苦労したのは「ハンドルの変更」


MotoGP | 令和によみがえったスズキ新型カタナ、開発秘話。最も苦労したのは「ハンドルの変更」

 新型カタナは“カタナ3.0コンセプトのデザインを最優先する”ことが開発方針と定められた。そのため、カタナ3.0コンセプトのデザインを再現しながらも量産化を実現するには苦労が重ねられたという。

発表会のステージに上がったスズキ二輪の濱本英信代表取締役社長(右)と二輪企画部チーフエンジニア寺田覚氏(中央右)、二輪設計部車体設計グループ三池翔太氏(中央左)、二輪管理部技術品質評価グループ班長大城光氏(左)
発表会のステージに上がったスズキ二輪の濱本英信代表取締役社長(右)と二輪企画部チーフエンジニア寺田覚氏(中央右)、二輪設計部車体設計グループ三池翔太氏(中央左)、二輪管理部技術品質評価グループ班長大城光氏(左)

 そんななかでもカタナ3.0コンセプトから変更されたのが、ハンドルだ。カタナ3.0コンセプトではローハンドルだったが、新型カタナではアップライトの幅広バーハンドルが採用されている。これは開発において、最も苦労した部分だったそうだ。

新型カタナには幅広のアルミ製アップハンドルが採用されている
新型カタナには幅広のアルミ製アップハンドルが採用されている

 テストライダーを務めた大城氏によれば、ローハンドルのカタナを実走したところ「ハンドルが低い位置にあり、乗ったときにバイクとしてバランスが取れていないなというのが、正直なところでした」と言う。プロトタイプということで、デザインがよくても実際に走ったときの感触としてはベストというわけではなかったようだ。

 車体設計を担当した三池氏は「コンセプトモデルから変更したなかでも一番大きい点です」とハンドルの変更について述べている。

「デザインが決まっているとシートの着座位置もある程度決まっているので、そのなかでどこがベストなのか、というのは考えるプロセスとして、通常の開発としてはあまりやらない方法でした。どこがいいのだろう、と探すというのが大変苦労しました」

「デザインに『こうしたい』と要望を出しながら進めるのが通常の流れです。これが、(カタナ3.0コンセプトという)大枠が決まっているとなると、それを成り立たせるという、新しいアプローチになります」

 新型カタナはカタナ3.0コンセプトというデザインの具現化が追求されていた。そのデザインを再現しつつオートバイとして機能性や耐久性、快適性、そして法規を満たした市販車とする、それは並大抵の困難ではなかったに違いない。ハンドル変更について腐心した様子を振り返りながら、それでも三池氏は「新しいアプローチで設計できたので、設計としては大変楽しかったですね」と語った。

 こうしたハンドルの変更とともに、ライディングポジションにも試行錯誤が重ねられた。シートの着座位置は従来モデルよりも前寄りとなっている。ライダーの重心が車体の前方になることで、フロント荷重が増大。これに合わせ、前のサスペンションは硬め、リヤサスペンションは柔らかめにセッティングされているということだ。

インナーチューブ径43mmの大径フロントサスペンション。KYB製だ
インナーチューブ径43mmの大径フロントサスペンション。KYB製だ
リヤショックは63mmのストロークを確保。プリロードの調整が可能
リヤショックは63mmのストロークを確保。プリロードの調整が可能

 こうしてたどり着いたライディングポジションは、スポーツ走行から快適なライディングまでを実現しているという。これには変更された、アップライトで幅広のバーハンドルが貢献の一端を担っている。僭越ながら筆者も発表会でまたがらせてもらった際、ライディングポジションが楽にとれることに驚いた。筆者は小柄(153cm)なのだが、1000ccの大型バイクである新型カタナは、乗車姿勢に無理を強いなかったのだ。この部分において見ると、様々なライダーを受け入れる懐の深さを持つバイクなのではないか、と思わされた。

ライディングポジションはアグレッシブなライディングから快適な走りにも対応する
ライディングポジションはアグレッシブなライディングから快適な走りにも対応する

 さて、こうしたアプローチで開発が進められた新型カタナ。カタナシリーズから踏襲された、こだわりの部分について聞くと、「まったくそのまま、という部分はありません。しかし、誰が見ても、これはカタナだなと思えるデザインですよね。シートからタンク、フロントカウルに流れるようなデザイン。そこは大切にしなければいけないと思って開発をしました」と寺田氏。

 新型カタナは、カタナ3.0コンセプトのデザインを現実にしようという開発陣の尽力によって生まれた、まさに”現代の”カタナなのだ。寺田氏は発表会の壇上で、こう述べている。

「新型カタナはファーストカタナの復活ではない。ほかにはない独自デザインと、最新テクノロジーを融合させた、新しいカタナです」

フロントにはブレンボ製のラジアルマウントのブロックキャリパーが採用されている
フロントにはブレンボ製のラジアルマウントのブロックキャリパーが採用されている
リヤにはシングルブレーキ。キャリパーはニッシン製
リヤにはシングルブレーキ。キャリパーはニッシン製
新型カタナのステップ回り
新型カタナのステップ回り
新型カタナのタンク回り。タンクのサイドに走った切れ込みをそのままとするため、燃料タンクはシート下に設置されている
新型カタナのタンク回り。タンクのサイドに走った切れ込みをそのままとするため、燃料タンクはシート下に設置されている
中央の黒い部分が燃料タンクの一部。リヤシート側にバッテリーが収められている
中央の黒い部分が燃料タンクの一部。リヤシート側にバッテリーが収められている
コンセプトモデルはシングルシートだったが、量産化に向け2名乗車可能なシートへ。可能な限り短くというデザインの要望と法規要件とのせめぎ合いがあったという
コンセプトモデルはシングルシートだったが、量産化に向け2名乗車可能なシートへ。可能な限り短くというデザインの要望と法規要件とのせめぎ合いがあったという
左サイドのスイングアーム。なかにパイプが通っており強度が高められている。ここからリヤフェンダー、ウインカーが取り付けられたテールへつながる
左サイドのスイングアーム。なかにパイプが通っており強度が高められている。ここからリヤフェンダー、ウインカーが取り付けられたテールへつながる
困難を乗り越えてコンセプトモデルを再現した、スズキ初となるターンシグナル付スイングアームマウントリヤフェンダー
困難を乗り越えてコンセプトモデルを再現した、スズキ初となるターンシグナル付スイングアームマウントリヤフェンダー
新型カタナのエキパイ。1-4ヘッダーパイプと2-3ヘッダーパイプの間にイラコライザーパイプを装備し、4-2-1システムとしている
新型カタナのエキパイ。1-4ヘッダーパイプと2-3ヘッダーパイプの間にイラコライザーパイプを装備し、4-2-1システムとしている
荷掛フック。通常はシート下に収納されている
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