Text:Mat Oxley<br>Translation:AKARAG

「僕は(ダニロ・)ペトルッチの後ろにいて、悪いタイミングで彼をオーバーテイクした。なぜなら彼より早く10コーナーに進入したときに、不運にもホルヘのバイクを避けられなかったからだ。ホルヘがこの競り合いをしたタイミングが良くなかった。彼は両方にソフトタイヤを選択したから、最初からとても激しくプッシュしていた」

「でも本当のところ、なぜ僕たちがこのコーナー(10コーナー)を使ったのか分からない。僕はよくやるように長い左カーブを使おうと戦っていた。それはとても良いやり方だが、どういう訳か僕たちはこのコーナーを使った。まるでスーパーマーケットの駐車場みたいだったのに」

「レーストラックのコーナーではないみたいだった。こうしたコーナーでは、この手のことが簡単に起こる」

 ロッシは間違っていない。この週末に起きた72件のクラッシュのうち、20件が10コーナーで起きた。14コーナー中ひとつのコーナーで、全クラッシュのうちの20パーセントを超えるクラッシュが起きたことになる。これがいわゆる事故の多発地帯だ。

 ドヴィツィオーゾはロレンソのホンダRC213Vが衝突したことで、タイトル獲得の望みに大きな打撃を受けたため、ロッシに比べると当然ながら同情心は少ない。

「ホルヘはスタートの後で大きく順位を上げていて、トップに出たがっていた。そして大きなミスを犯したんだ」とランキング2番手につけるドヴィツィオーゾは語った。

1周目で5番グリッドスタートからトップに立ったアンドレア・ドヴィツィオーゾ
1周目で5番グリッドスタートからトップに立ったアンドレア・ドヴィツィオーゾ

「あのコーナーでは簡単にミスをしてしまう。1速にしたらやり直すことはできない。そして小さなミスが最後には大きなミスになってしまうんだ」

「ホルヘはあの瞬間正気ではなかった。彼はマーベリックをオーバーテイクしたがっていた。でもどこでブレーキングをするか見ていなかった。マーベリックはとても遅い段階でブレーキをかけ、ホルヘはその後でブレーキをかけたので、ホルヘは早く追いつきすぎて、イン側に行ったんだ」

「あのミスは重大というわけではないが、2周目であのコーナーでああした動きをするのは大きなミスだ」

「クラッシュのせいでチャンピオンシップに大きな変化が生まれてしまった。マルクは優勝し、僕たち3人はゼロポイントだからだ。本当に最悪だよ。今年僕たちがやりたかったことは、マルクを限界まで追い詰めることだった。そうすれば誰もがミスを犯し得る。今ではマルクは差を大きく広げた。彼との間の大きなポイント差を埋めるのは簡単なことではない」

 もちろん、2周目での多重クラッシュはバイクレースでは何も珍しいことではない。ライダーはブレーキング勝負に貪欲な習性を持っており、フロントタイヤをロックさせて、ライバルのひとりやふたりを転倒させるものだ。

 ロレンソのインシデントは日曜日の10コーナーにおける3件目のインシデントだったが、唯一記事のトップを飾ることになった。最速のバイクレーサーのうち4人が巻き込まれたからだ。

 このクラッシュは、同様に大きな記事となったもうひとつの事故を彷彿とさせる。それは2011年のスペインGP序盤において、ヘレスの第1コーナーでロッシがケーシー・ストーナーをクラッシュに巻き込んだ一件だ。ロッシは開幕からの数戦でドゥカティのデスモセディチGPで苦戦を強いられた後にスペインGPに臨んだ。ロレンソがレプソルRC213Vで最初の数戦に苦しんだ後に、日曜日のカタルーニャGPを迎えたようにだ。

 何年も前のヘレスでのロッシのように、ロレンソは突如として自分が上位に近いところにいることに気づき、エキサイトしすぎてしまった。

■予選でロレンソよりも大きなミスを犯したビニャーレス

 日曜日のレース後、ビニャーレスはレースディレクションに対し、ロレンソに厳しいペナルティを科すことを求めると発表した。(実際にそれはMotoGPのスチュワードの仕事なのだが)

「レースディレクションが、昨日の僕に対してそうだったように、ホルヘに対しても厳しい態度を取ることを望む」とビニャーレスは語った。

マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)
マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)

 前日の午後にいっそう悪質な罪を犯したライダーとしては、大した行動だ。ビニャーレスへのペナルティは非常に軽いもので、たったの3グリッド降格だった。

 土曜日の予選Q2を、ビニャーレスは4月のアルゼンチンGP以来となるフロントロウからスタートした。ビニャーレスはフィニッシュラインを通過した後に結果に喜び、コース中央を低速で走行し、ウイリーをしてファンに手を振った。

 だが実際にはチェッカーフラッグは振られていなかった。セッションはまだ続いており、コースでは走行が続けられていた。ライダーたちはできる限り最高のグリッドポジションを得るためにファステストラップを出そうと全力で走行していた。

 その周回でターン9を出ようとしたビニャーレスは、非常に遅いスピードで走行していた。その時ファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)はアタックラップを走行中で、ミサイルのような勢いでビニャーレスを抜いたが、彼から1メートル程度のところをすり抜けることになった。

 MotoGPのスチュワードはその後、ビニャーレスの行為に対して3グリッド降格ペナルティを科したが、ビニャーレスはそのペナルティが厳しすぎると感じた。「いつも礼儀正しいライダーにとっては、厳しすぎると思う」とビニャーレスは語っている。

 だがここで問題なのはマナーではなく安全性だ。多くの危険で致命的なクラッシュの原因は、ほとんどの場合速度差にあるのだ。ビニャーレスは時速約97km/hで走行していたのに対し、クアルタラロは時速約193.1km/hで彼を追い抜いたのだ。彼らが衝突していたら、何が起きていたか想像してみてほしい。

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