2017年と2018年の間に、ドゥカティは13戦で優勝し、アンドレア・ドヴィツィオーゾはその間にレプソル・ホンダのマルク・マルケスについで2位になったことが2度あった。だが2019年はさらに厳しい年になっている。デスモセディチGP19の競争力が劣っているのではなく、スズキとヤマハがさらに競争力を増しているため、そのことがデスモセディチGPのアドバンテージを打ち消してしまい、中速コーナーでのコーナリングというひとつの大きな弱点が強調されてしまっているのだ。
中速コーナーのコーナリング問題は新しいものではない。実際、2016年にドゥカティのテストライダーとなったストーナーが2017年に役目を降りた理由のひとつとして、エンジニアたちがこの問題に対する彼の意見に反応を示していないと感じていたことがあるという。
ドゥカティがいかにしてデスモセディチGPの問題点を改良するのか。私はドゥカティ・コルセのゼネラルマネージャーを務めるルイジ・ダリーニャと話をした。ダリーニャはインタビューで多くを明かさずに話すことにかけては名手である。私はベストを尽くした。
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Q:イタリアGP以降、ドヴィツィオーゾは中速コーナーでのコーナリングに多くの不満を述べている。オランダGPでは改良版フレームを使っているが、その違いはどんなものか?
ルイジ・ダリーニャ(以下、ダリーニャ):我々はフレーム剛性に目を向けているが、ライダーがコーナー中盤で速さを出す助けになる他のことについても検討している。シャシー剛性が項目のひとつに入っているのは確かだ。シャシーにはさまざまな剛性があり、問題を解決するための最も重要な剛性を選ばなければならない。これは簡単なことではない。
Q:フレーム側面の剛性は主要な領域ですか?
ダリーニャ:どの領域に対して作業を行なっているか正確なことを話すことはできない。私は技術者だ。技術者というものは多くを語りたがらないものなんだよ(笑)

Q:ドゥカティのMotoGPマシンはライダーがエンジン出力のアドバンテージを活かせるように設計しているということは正しいか?
ダリーニャ:それは事実だ。
Q:では、他の部分を犠牲にすることなしにどのようにマシンを改善できるのか?
ダリーニャ:他の領域にあるものを犠牲にすることなしに、ライダーの持つ問題を可能な限り解決するには、ベストを尽くさねばならない。もちろん時にそれが不可能なこともある。だから必要なことと、持てるものの間で、妥協しなければならないこともある。
私は我々の目標が不可能だとは考えていない。簡単ではないし、時間がかかることは確かだ。我々は長年にわたり加速だけでなく、中速コーナーでのスピードも改善してきたのは確かだ。
現実にはバイクを改善するためにはアイデアが必要で、私はライダーがバイクについて最も不満を持っている領域を開発したいと思う。だが別の領域についてアイデアが沸いたら、私はそのアイデアを実行しないではいられない。なぜならラップタイムにおいてアドバンテージとなるかもしれないからだ。
だからライダーの要求と、自分がその時に持っているアイデアの間で妥協することになる。時には、そのアイデアがライダーを満足させるために必要なものかもしれない。その他の時には、別の解決策によって別の改善を図ることになる。
Q:ラップタイムが拮抗しているという事実は、物事をさらに複雑にしている。なぜなら1周あたりコンマ1秒単位のタイムが期待されているからだ。
ダリーニャ:まったくだ。時には改善できたのかどうかさえ分からない時がある。違いが小さすぎるからだ。
Q:2種類の異なるフレームセットアップが必要なタイミングに来ているのか? ひとつはストップ・アンド・ゴータイプのコース用、もうひとつは高速で流れの良いコース用といったように。
ダリーニャ:さまざまなレーストラックによって妥協する内容は異なる。コースのレイアウトによって可能な限り最善のバランスを見つけなければならない。アスファルトに十分なグリップがあるかどうかといったような点においてだ。各コースはそれぞれ異なるものが必要になる。
もし、ある特定の変更をバイクに施したらグリップを改善できるし、他の変更を施したらブレーキングの安定性を改善できる。セットアップによって、さまざまな問題を解決するためにさまざまな方向へ向かうことになる。
通常、我々には基準のセットアップがあり、そのセットアップでスタートする。同じ方向性を2、3回実施し、まったく同じ改良を行うことになったら、ベースのセットアップを変える。たとえば、ムジェロ(イタリアGP)とバルセロナ(カタルーニャGP)で、我々はフリー走行1回目のスタートからレースまで、ほぼ同様の変更を行うことになった。だからおそらく標準セットアップを変更する時期に来ている。

Q:ブリヂストンタイヤの時に比べて多くの変更をミシュランタイヤ向けに行っているか?
ダリーニャ:そういうわけではない。多かれ少なかれ同じだろう。
Q:アンドレアが中速コーナーでのコーナリングの問題について話していた時、彼はいまだにフロントタイヤを使っていることを話していたのか? それともリヤタイヤに一旦荷重を移したことについて話していたのか?
ダリーニャ:一番の問題は、ライダーが完全にブレーキをリリースする時、彼はアクセルを開けるのを待っているということだ。
Q:ドゥカティとホンダは両方とも90度V4エンジンを使用している。理論上は同じ強みと弱みを持っているはずだが。