さて、そのKTMだが、第13戦サンマリノGPからマシンの挙動が大きく変わった。それまではバタバタと走っている印象だったが、今は「鉄フレームを止めてアルミフレームにしちゃった?」と疑いたくなるぐらい、しっとりした動きをしている。
元世界GPライダー、今はMotoGPのレポーターを務めるサイモン・クラファーが「エンジンマウントとフレームの一部がスカスカだ」というようなことを語っていたが、確かによく動いているのだ。
KTMは第5戦フランスGPあたりからいち早くカーボンスイングアームを導入していたが、その時点ではリヤだけがネジレていた。だからパフォーマンスを発揮できるのはリヤタイヤが機能しているうちだけ。レース終盤にはポジションを落としていくのが常だった。

でも今は、フレームから何かを抜くことで適度なしなりが出てきて、リヤのネジレとのバランスが取れてきたようだ。サンマリノGPでは終盤までいいペースを維持していた。
つくづく、ザルコがもう少しオトナだったなら……。
さて、長くなったついでに、カーボンスイングアームによるネジレについてもう少し解説しておこう。カーボンスイングアーム装着車は、確実にリヤがネジレている。コーナー進入時の写真をよくよく観察していると、フロントタイヤがいるラインと、リヤタイヤがいるラインが違うのだ(舵角やスライドアングルとは別)。

カーボンスイングアームに関しては、多くのライダーが「トラクション性能が良くなった」とコメントしている。そこでワタシの推測。例えばコーナリング中から立ち上がりにかけて、マシンが50度寝ているとしよう。カーボンスイングアーム装着車は、ネジレ効果によりリヤタイヤだけが49度、48度と微妙に先行して起き上がっていくようなのだ。車体はまだ寝ているのに、リヤタイヤが起きているから、その分早く、大きくアクセルを開けられる……。
カーボンスイングアームによってリヤがネジレているのは間違いない。そこに「トラクション性能が上がった」というライダーのコメントを組み合わせると、「リヤタイヤ先行立ち上がり説」もあながち間違いではなさそうだ。
ネジレと言っても、本当にビミョーな量だろう。でもライダーは確実にそれを感じ、速く走るための手がかりにしているのだ。