「今は自分を改善しようとしている。新しいアイテムができたとしても、僕はバイクを同じ状態に保つ。最高のレベルで、バイクをより深く理解しようとしているんだ」
また、ルーキーシーズン5度目のポールポジションをマレーシアGPで獲得したクアルタラロも、ビニャーレスやヤマハファクトリーチーム全体に強い刺激を与えたことは間違いないだろう。
「ヤマハのライダーが前にいると、バイクの乗り方や、どう改善したらいいかを理解するのにいつも役立つんだ」とマレーシアGPの決勝にビニャーレスはコメントした。
「ファビオはヤマハに本当に合っている。だから彼はあれほどプッシュできる。研究して学び取るんだ」

だがビニャーレスは一旦クアルタラロの秘密を分析すると、周りのライダーよりもさらに自分自身に集中するようになった。ガレージのなかでも外でもだ。
「この5戦から6戦は、自分自身に深く集中してきた。他のライダーと比較することはそれほどしていない。僕たちは自分たちのやり方でやっている。それがうまくいっているようなんだ」
「実際のところ僕たちがやったのは、バイクを同じ状態に保って、電子系の作業をとても慎重に行なったことだ。僕は最高のやり方でバイクを走らせる方法を理解しようとした。どうやってバイクと一体になるか、どうやって最大限にプッシュできるかをね」
■マレーシアGP優勝候補のクアルタラロが失速した理由
クアルタラロはマレーシアGPでは優勝候補だったが、彼はフロントタイヤに問題を抱えていた。タイヤの温度が上がりすぎたために空気圧も高くなり、グリップを失ってしまったのだ。
クアルタラロはビニャーレスに17秒遅れの7位でひっそりとフィニッシュした。クアルタラロはこのような状況でも落ち着いていた。なぜなら彼はこういうことが起きる時もあると承知しており、そのような時に腹を立てても仕方がないとわきまえている。それに、自分の時代がそのうちやって来ることを分かっているのだ。
クアルタラロはビニャーレスとヤマハがYZR-M1の新しい乗り方を見出す手助けをした。それはホルヘ・ロレンソの滑らかなスムーズさと、ホンダのマルク・マルケスの荒々しい攻撃性の間を行くものだ。

「もちろんヤマハのマシンもスムーズに乗る必要がある。でもスムーズさと攻撃性の間のバランスがあるんだ」とマレーシアGPでクアルタラロは語った。
「このバイクで速さを出すには、正しいバランスを見つける必要がある。そして僕たちはそれを見つけたと思うよ」
「奇妙なんだけれど、バイクに乗るたびにラップタイムを出すのが難しくなる。最初のうちは簡単じゃない。でも速いラップタイムを出すためにはそれでいいんだ」

「でもそこから本当に速さを出すのは、とても難しい。よりアグレッシブになると同時に、とてもスムーズに行く必要もある。それが簡単ではないと僕が言った理由だ。なぜならアグレッシブになるのは簡単だけど、本当にアグレッシブにこのバイクに乗るとラップタイムが出ない。でもとてもスムーズに乗ると、良いラップタイムが出るけれど、十分な速さではないんだ」
レースにおいてすべてのことがそうであるように、バランスが重要なのだ。MotoGPライダーはヘビー級レスラーの才能に、バレエダンサーの才能を組みあわせなければならない。それはまるでハルク・ホーガンとルドルフ・ヌレエフをひとつの身体に収めるようなものだ。簡単なことではない。
もちろんセパンで優勝したビニャーレスと、ポールシッターのクアルタラロ、ラップレコード破りのロッシは、週末を通して何かしら強みを持っていた。