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MotoGP ニュース

投稿日: 2019.12.26 16:13

2万回転リッター250馬力を目指した長円ピストン4スト500ccV4の『NR500』エンジン4世代の進化

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MotoGP | 2万回転リッター250馬力を目指した長円ピストン4スト500ccV4の『NR500』エンジン4世代の進化

 ホンダは1977年に“世界グランプリ復帰宣言”を行い、2ストロークエンジン全盛の世界グランプリ最高峰500ccクラスに、4ストロークマシンで翌年から再挑戦を開始した。

 革新的なマシン『NR500』での戦いは、ホンダの信念と熱い想いを賭けた戦いでもあった。しかし、なかなか思うような成績を残すことができない苦しい闘いが続き、マシンの改良も積み重ねられる。もちろん長円ピストンのV4のエンジンも、さらなる戦闘力アップを求めて進化を続けた。

 毎号1台の2輪レーシングマシンにフォーカスして掘り下げる『レーサーズ』の最新号Vol.55は前号に続きホンダNR500を『Part2テクニカルレビュー編』として取り上げる。

 ここでは、そのNRの中でも一番特徴的ともいえる長円ピストンの4ストV4エンジンの4世代の進化についての解説ページを一部紹介する。

* * * * * *

■0X_NR1[1979]

従来の知見・データを活用しながら8バルブ・長円ピストン V4を成立させた習作

 単気筒テストエンジン『KO』のベンチテストが重ねられて1カ月ほどが経った1978年11月より設計が行われ、1979年4月に実機が完成したNR500初の4気筒エンジンが『0X』である。番号に『0』が使われたのは、そもそもはテスト用として企図されたものであったことをうかがわせるが、時間がなかったことからそのまま初代NR500(NR1)の搭載エンジンとなった。

初代NR500=NR1に搭載された0Xエンジン
初代NR500=NR1に搭載された0Xエンジン

 横長の長円シリンダーを4つ並べた並列レイアウトはエンジン寸法的にあり得ず、0X以降のすべてのNR500の4気筒は必然的にV型とされた。0XではVアングルは100度。クランクシャフトの一次振動を理論的にゼロにできる90度が本来は望ましかったが、前バンク用のダウンドラフト型と後バンク用のサイドドラフト型を組み合わせたNR専用キャブレターユニットと適切な形状の吸気通路を確保するにはこの時点の技術では100度が必要だった。

 プライマリーシャフトを持つ4軸構成とされ、クランクシャフトは逆回転に。この仕様はNR500の事実上の最終モデルとなったNR4に搭載の3Xエンジンまで引き継がれた。

 動的なメカニズムや各気筒におけるコンポーネントのディメンションの多くはK0のものが踏襲されている。ただし、K0では2本構成だったピストンリングは3本構成に変更されるなど、K0のテスト結果を反映させた設計とされているのはもちろんである。

 0Xは長円の“UFO”ピストン/シリンダーを採用した初めての4気筒エンジンであり、それを短期間で成立させねばならなかったことから、UFOに関連する新技術以外はホンダが1960年代に取り組んだレーサー開発で培った知見やデータを活用して設計することで時間短縮が図られた。

 エンジン設計PLであった田中英生は「レーシングエンジンですから、軽く・小さく仕上げることはもちろん意識しましたが、100度。クランクシャフトの一次振動を理論的にゼロにできる90度が本来は望ましかったが、前バンク用のダウンドラフト型と後バンク用のサイドドラフト型を組み合わせたNR専用キャブレターユニットと適切な形状の吸気通路を確保するにはこの時点の技術では100度が必要だった。プライマリ強度や剛性をきちんと確保しながら設計をしていくと、所詮はある寸法のところで出来上がってしまう。そこはあまり無理しませんでした」と言う。

 また、0Xは歴代NR500エンジンで唯一、モノコックフレームに搭載という条件が課せられたものだったが、「モノコックにこのエンジンを一体感を持って抱かせる、ということには気を遣いました。要所要所に大きなボスをつけ、より広い面積でモノコックと密着させる、というふうに。ただ、車体剛性の一部を担わせるからとエンジンの内部構造に気を遣ったところは特にありません」とのことである。

1979年登場した初代NR500=NR1
1979年登場した初代NR500=NR1

■1X_NR2[1980]

センターカムギアトレインを採用
耐久性とパワーが一気に向上し、重量も増加


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