更新日: 2020.01.31 19:55
MotoGP歴代最高得点の2019年型は「車体でチャレンジ」/ホンダRC213V開発の裏側【前編】
2019年型RC213Vは前年モデルと比較してトップスピードが向上していた。それはパワーサーキットであるロサイル・インターナショナル・サーキット(第1戦カタールGP)や、レッドブル・リンク(第11戦オーストリアGP)で、トップスピードに定評のあるドゥカティ勢に匹敵するストレートスピードだったことからも明らかだ。
「正常進化」と表現されたエンジン側の改良について、桒田レース運営室長は「同じ仕様のエンジン性能をアップさせていくと伸びしろはどんどん小さくなっていきますが、その伸びしろがまだあると考えていたので、そのままエンジンの出力を上げていく方向でいきました」と説明する。
「今まで重箱の隅をつつくイメージでしたが、それをもう一度新しいエンジンで焼き直していったというイメージです」
「出力を大きく上げられたことは、2019年シーズンの勝因のひとつだと思っています。直線が速いことで戦略の幅が広げることができるということは、ライダーも我々も実感しています」
「トップスピードは追いついてきていると思いますが、まだ“ぶち抜ける”レベルではありません。『何年か前までライバルにストレートでやられていたことをやり返すところまでいかないとホンダらしくないよね』ということもみなさんによく言われます(笑)」
一方、チャレンジングな姿勢で開発に臨んだという車体側では、「エンジンに対する吸気口の形を大きく変えています。それにともなってフレームが大きく変わっています」と桒田レース運営室長。
具体的に見ると、2018年型まではエアインテークダクトがフレームサイドに設置されていたが、2019年型ではサイドにエアインテークはなく、吸気口からエンジンまで一直線で空気を流す形状になっている。
HRCの若林慎也開発室長によれば、吸気レイアウトを変えたことで「エンジン出力の“取り分”が出てくるということと、燃調の安定化といった副産物、ドライバビリティの向上など、総合的に出力と性能を上げる」ことができたとのこと。
「(新フレームは)ヘッドパイプ回りが大きく変わるので、2018年シーズンの途中からテストをしてきました。カタールテストでマルク(マルケス)が本調子になって新フレームのマシンに乗れるようになり、その時点で新フレームは2018年型マシンとほぼ同じ性能になっていました」
「ただ、ホルヘ(ロレンソ)やカル(クラッチロー)のフィードバックによれば、ネガティブなところも出てくる可能性もありました。そこはカーボンを貼ったフレームなど、さまざまな改善策を入れたフレームを投入して少しずつ進化させていきました」
車体側の改良について、桒田レース運営室長は「なにかがよくなっても、どこかのパフォーマンスは落としたくないというのが、我々のなかで一番難しいところ」と付け加える。