更新日: 2020.01.31 21:03
“マルケス・スペシャル”と呼ばれた19年型。2020年は「トータル戦闘力向上」/ホンダRC213V開発の裏側【後編】
深いバンク角で旋回中は足で操作するリヤブレーキが使いづらくなるため、代わりにハンドルを握る親指でリヤブレーキを操作するサムブレーキが装着された車両もあったが、第18戦マレーシアGPに登場したマルケスのRC213Vにはボタンではなく、スクーターバイク並に巨大なレバーがクラッチレバーの上に装備されていた。
このレバー式リヤブレーキについては「開発陣のアイデアです」と桒田レース運営室長
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「やはりリヤブレーキを足で操作しているとコーナーごとに使い方が変わってきます。ご覧のとおり、今のバンク角ではバンク側の足での操作が厳しいんです。特に右コーナーが厳しい。その操作性を上げてあげるというのがあります」
「リヤブレーキを使う際、マルクが本来置きたい場所に足を置けず我慢していることも考えられます。ライダーからも(新しいリヤブレーキを)トライしてみたいというのがあったので、今はいろいろな種類のリヤブレーキをトライしているところです」
■2020年型はトータル性能のさらなる向上
2019年型RC213Vは“マルケス・スペシャル”とも言われており、マルケス以外のホンダライダーはマシンに合わせこむことに苦労していたと言われている。桒田レース運営室長は「世の中ではホンダのマシンは乗りにくいと言われている部分はありますが、最初は確かにうまくまとめきれなかったところはあったと思います。冬のテストから、その面で苦労していたのは事実です」とだけ応えた。
最後に2020年型RC213Vの開発に向けての課題を次のように明かした。
「車体側の課題として、ひとつはブレーキング旋回。特に大きく回り込むようなコーナーだとヤマハがすごく速く、我々はその差を実際に感じています。そういったところを今後対応していかなければと思っています」
「エンジンでいうと、出力の面で“頑張れ、頑張れ”とやってきていますが、他の部分で出し切れているかと言えば、まだ出し切れていないので、この部分もやっていかなければいけない」
「同時にエンジン出力が上がるとドライバビリティの問題も必ずついてきます。ドライバビリティは落とさない、あるいは上げていく必要があります。出力が上がるにつれてドライバビリティの要求がどんどん高いレベルに来ているというのがあるので、そのあたりも課題です」

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若林開発室長も桒田レース運営室長と同じく、ドライバビリティ向上が鍵だと語った。
「2018年、2019年と出力が上がったことでレースの戦略面で幅が広がってきているのは事実です。その分、減速、ドライバビリティなどの要望に100%応えられているかというと、まだまだそういう状態ではありません」
「やはりバイクとしては、強いところ、弱いところが当然あるので、強いところを伸ばしながら弱いところも底上げし、トータルの戦闘力を上げるというのが今進めている方向性です」
2020年は王者マルク・マルケスの弟アレックス・マルケスをチームに迎え、新体制でMotoGPを戦っていくホンダ。4年連続10度目3冠を目指し、競争激化の一途をたどるMotoGPに挑む。
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