2月ではあるが、セパンテストで新しいリヤタイヤを試したスズキのアレックス・リンスに聞くと「基本のパフォーマンスがすごく上がった。(予選用ソフトタイヤは)どのライダーも平均的に大きくタイムを上げるのに役に立ったよ」と印象を語っている。
そして7月13日、ミシュランタイヤはスペインGPに持ち込んだタイヤについて、昨年からグリップ、パフォーマンス、耐久性を向上させたと説明している。また、7月のヘレスは気温が高くなることを予想して、過去のデータを分析。コンピュータシミュレーションを実行して、新しいタイヤの構造に一致する化合物を選択しタイヤを製作したという。

ミシュランがMotoGPクラスにタイヤ供給をスタートした2016年以降に決勝で50度を超えたのは、2017年のカタルーニャGP(54度)2018年のイタリアGP(51度)、マレーシアGP(53度)、2019年のカタルーニャGP(51度)の4戦と少数。そのためタイヤ製造にコンピュータシミュレーションを使用しなければならなかったことも納得できる。
タイヤのパフォーマンスが向上したことでクアルタラロは予選Q2で1分36秒705をマークしオールタイムラップレコードを樹立。しかし、予選セッションの気温、路面温度は上述の通り、レースウイークで一番高かった。
今回、気温の上昇を予想して新たに投入されたタイヤは、予選には適合したものの、決勝にはマッチせずグリップが低下したのだろう。とはいえスペインGPが昨年まで第4戦として開催されているため、開幕数戦を経験できず、初戦となった2020年の新型マシンの熟成具合に不安を残していたことが要因である可能性もある。
しかし、2018年からレース周回数が25周に変更されたヘレスの優勝者のタイムは2018年が41分39秒678(マルケス兄)、昨年は41分08秒685(マルケス兄)、41分23秒796(クアルタラロ)と今年が大幅に遅かったわけではないことから、マシンに戦闘力がなかったわけではないことがわかる。

MotoGPは7月から11月まで過密日程のなかヨーロッパ内で13戦が行われている。開催時期の変更により例年より気温が高くなるグランプリ、逆に10月以降に延期されたことで気温が低くなるグランプリではタイヤ選択が重要になるだろう。
今週末も同地ヘレスでアンダルシアGPが開催される。優勝を目指すためにはアタックを試みてギリギリを攻める必要があるが、気温と路面温度、そしてタイヤの使い方を考慮して安定したペースを刻むことも勝利の鍵に繋がるのかもしれない。