一方、対照的な週末となったのがチームメイトのポル・エスパルガロだった。予選では、2番手タイムをマークしたものの、他ライダーの転倒によりイエローフラッグ提示区間があったためにタイムがキャンセルされ、6番手となった。
「午後にはバイクの感触はすごくよくて、最初のアタックで履いたタイヤでも速かったし、2度目のアタックに履いたタイヤではもう少し速く走れると思ったから攻めていたんだ。イエローフラッグまではすべてが順調だった」
決勝レースでは序盤にポジションを落としたものの、6周目には4番手に浮上。ところが、10周目の1コーナーでそれは起きた。ブレーキングでややワイドにはらんだエスパルガロ。インにポジションをとるヨハン・ザルコ(エスポンソラーマ・レーシング)。エスパルガロがイン側にラインを寄せていったとき、イン側にいたザルコとアウト側のエスパルガロが接触。エスパルガロはスリップダウンを喫してリタイア、ザルコはそのままレースを続行した。
この接触により、ザルコはロングラップ・ペナルティを科されている。しかし定められたペナルティのコースを走り抜けたザルコは、ポジションを落とすことなくレースに復帰。3位表彰台を獲得した。
「僕が前を走っていて、ザルコは避けられたのにそうしなかった。ザルコは僕をラインから外したんだ」と語るエスパルガロ。
一方のザルコは「ペナルティは公平だったと思う。彼(エスパルガロ)がワイドにはらんで、僕はインに入った。スペースがあったからね。うまく入ったと思っているよ。でも、僕たちは接触した。どうやらポルは僕を見ていなかったみたいだ」と、転倒について言及した。
エスパルガロはレース後の取材のなかで、転倒について口早に説明してから「今は、熱くなっているから転倒についてあまり話したくない。話さないほうがいい」と付け加えた。KTMが最高峰クラスに参戦した2017年シーズンからチームに加わり、戦い続け、マシンをつくってきたエスパルガロ。2018年シーズンのバレンシアGPでは、KTMで初表彰台となる3位を獲得した。ビンダーが成し遂げた優勝という結果は、喉から手が出るほどほしかったはずだ。
「バイクについてはすごく満足している。優勝できるポテンシャルを持つバイクがあるということがうれしい。でも、僕はすごくイライラしている。次のレースも同じようになるかわからないんだから。もしかしたら1年に1度のチャンスだったかもしれなくて、僕が優勝したかったのにできなかった。大きなチャンスを失ってしまったように感じている」
ただ、エスパルガロも転倒までにポテンシャルを見せていたことは確かだ。予選でも不運なタイムキャンセルはあったが、2番手に相当するタイムをマークしてもいた。エスパルガロ自身が語るように、次戦も同じようにことが進むかはわからない。それでも、KTMのライダーはふたりともに、今季の注目を集めていることに変わりはないのだ。