Eri Ito

 そして、2位フィニッシュとなったA.マルケスは、前戦フランスGPで2位表彰台を獲得するまで、シングルフィニッシュは2度にとどまっていた。A.マルケスは最高峰クラスのルーキーだが、同時に、ホンダのファクトリーライダーなのだ。

 しかし、ウエットコンディションとなったフランスGPで2位に入り、続いてドライコンディションとなったアラゴンGPでも2位でチェッカーを受けて2戦連続で表彰台に上った。

 モーターランド・アラゴンはホンダ向きのサーキットだと言われており、A.マルケスも予選では初めてQ2に進出し、11番グリッドを獲得。予選日のあと、A.マルケスは「表彰台は期待していないよ。それは僕たちの目標じゃない。僕たちは8位以内を目指そう」と決勝レースでの目標を控えめに語っていた。しかし、レースが始まってみれば、A.マルケスはリンスと最終ラップまで優勝争いを繰り広げていた。

 中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)は、3周目に最終コーナーでA.マルケスに交わされて驚いたという。

2020年MotoGP第11戦アラゴンGP アレックス・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)
2020年MotoGP第11戦アラゴンGP アレックス・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)

「アレックス(・マルケス)は内側にとどまっていたから、どうやってコーナリングしているんだろうと思いました。レース終盤にはタイヤのグリップが低下するだろうとも思ったんですが、最後まで彼はトップグループにいてペースを維持し、グリップをもたせていました」

「インサイドにラインをとろうとすれば、エッジグリップを使うことになります。だから、僕が同じ事をしようとしたら、5、6周もするとリヤタイヤのグリップが低下してしまうんです」

 中上は少しばかり笑いを交えて「どうやってレースをしたのか、彼のデータを見たいですよ」とも語った。確かに、A.マルケスはバックストレートから16コーナー、そして続く17コーナーでインサイドにラインをとり、ここでミルをも交わしていたのだった。

 シーズンが後半に入り、ホンダのバイクについての理解を深めたことも、このパフォーマンスに結びついているようだ。「どうしてみんながホンダのバイクは難しいと言うのかわかり始めたよ」と、決勝レース後の会見でA.マルケスがホンダのバイクについて解説した。

「すべてのポイントで強く走らないといけないからなんだ。つまり、ヤマハは多くの場合、コーナリングスピードと加速に集中する、それからたぶん、ドゥカティは加速にのみ集中する。でもホンダは、すべてのポイント、つまりブレーキングポイント、コーナリングスピード、加速において強くある必要があるんだ。だから、ライダーに要求するところが大きい。常に限界で走る必要があるわけだからね」

「ちょっとでも気を抜けば、1秒ロスしてしまう。たぶん、ほかのバイクなら、0.2秒くらいのロスですむんだ。でも、僕は楽しみ始めたよ。すべていい方向に向かい始めている」

 ホンダのバイクを理解し始め、2回の表彰台に立ったA.マルケスだが、現実的だという目標は謙虚だ。「今の目標は、毎戦表彰台を獲得することじゃなく、常にトップ8にいることだよ」。

 シーズンの11戦目に、またひとり2020年シーズンにおける新しいウイナーが生まれ、新たな主役たちが優勝を争った。残り4戦、まだまだシーズンの混迷は続きそうだ。

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