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 そして、スズキのマシンでMotoGPにデビューしたこともミルにとって後押しとなった。スズキはGSX-RRでMotoGPクラスに復帰して以降、着実にマシンを進化させて来た。ミルにとって一世代上のアレックス・リンスがエースライダーとしてマシン開発とチームを引っ張る中で、ミルはルーキーとしてセカンドライダーのポジションを得て、1年目で経験を積むことができた。そして、2年目の今年、その才能を大きく開花したと言えるだろう。

 スズキにとって、再開1戦目のスペインGPでリンスが転倒負傷し、その影響を序盤戦でひきずったことは計算外だったが、その間にミルが大きく成長。アラゴンGPではランキングトップに浮上した。ミルにとってヨーロッパGPでの優勝は待望の勝利だった。今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、変則的なシーズンになったとは言え、最高峰クラスでは、無勝利のままチャンピオンになったライダーはいないからだ。

 ヨーロッパGP決勝はリンスが先行、ミルが追うチームメイト同士のバトルとなった。ミルは17周目の11コーナーでシフトミスしたリンスのインに飛び込むと、その後、ペースを上げて、完ぺきな優勝を手にし、スズキは今シーズン4度目となるダブル表彰台、MotoGPクラスとなって初のワンツーフィニッシュを達成した。

2020年MotoGP第13戦ヨーロッパGP ジョアン・ミルとアレックス・リンス
2020年MotoGP第13戦ヨーロッパGP ジョアン・ミルとアレックス・リンス

「本当にうれしいとしか言いようがない。今週末はチームと僕で完ぺきな仕事ができたと思う。タイトル争いの渦中にいる時はいつも以上に慎重にならなければならないから、100%の力を出し切って走るのは簡単ではないけど、今日は初優勝のチャンスが見えたからなんとしてでもそのチャンスを手に入れたかった。マシンのフィーリングは完ぺきだったから絶対にいけると思った」

「MotoGPクラスで優勝する喜びは一言では言い表せないくらい本当に何とも言えない思いだ。今週末は天候が不安定で、決勝に向けては不確定な要素も多かったから、その難しい状況で優勝できたなんて本当に夢のようだ。タイトル争いはまだ終わっていないから、来週末もとにかく集中して、自分がやるべきことをしっかりやっていく」とミル。

 残り2戦、ミルはどこまで勝利数を伸ばすことができるか。最終戦ポルトガルのポルティマオ(アウトドローモ・アルガルベ)はMotoGPシリーズ初開催のコース。ミルはMoto3ジュニア世界選手権時代の2015年に優勝経験を持っている。

2020年MotoGP第13戦ヨーロッパGP ジョアン・ミルとアレックス・リンスがワン・ツーフィニッシュ(チーム・スズキ・エクスター)
2020年MotoGP第13戦ヨーロッパGP ジョアン・ミルとアレックス・リンスがワン・ツーフィニッシュ

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