スペインモータースポーツ事情:世界に挑む日本人ライダーの厳しい現状
■日本人ライダーがヨーロッパで活動する難しさ
もし将来有望な若いスペイン人ライダーに、日本へ行き全日本ロードレース選手権に参戦するように頼んだとしたら、彼らは悪戦苦闘するだろう。言葉の違う、初めて行く国に移り住むことは、大人でさえ怖気づくようなことなのだから、若いレーサーたちにとってみればトラウマとなる出来事になるであろう。
こういった例は、CEVに挑戦する日本人ライダーにも言えることだ。
モーターサイクルの世界において、日本人ライダーは優れた仕事への倫理と姿勢を兼ね備えており、素晴らしいチームプレイヤーとして評価されている。しかし同時に、丁寧で、時に几帳面な日本文化はスペインやイタリアなど南ヨーロッパの文化とは真逆なのだ。
ヨーロッパのチームは世界を制覇できるような気の強い若者を求めている一方で、控えめな性格の日本人は現実の厳しさを味わうのだ。
優れたスペイン人ライダーたちは個人主義的であるため、どこかへ旅行をするといったことは彼らにとって問題ではない。その一方、才能ある日本人にとって、スペインに移り住むといったことは、未だに高い壁であり、ヨーロッパに住むことは困難なことだろう。家族や友人から離れて暮らすことによる不安などが、成功の可能性を減らしかねない。我々は優れた才能を持った日本人がヨーロッパに渡り、世界選手権にアピールする前に姿を消してしまう例を何年にも渡って目の当たりにしてきた。
これは、CEVに参戦している多くのチームがスペインのチームであり、クルーのほとんどがまともに英語を話せないために発生してしまう問題でもある。メカニックとコミュニケーションをとり、迅速に問題を解決できるスペイン人ライダーにとってはハンディキャップにならないが、日本人が同じことをしようとすると乱雑になってしまう。そして自分自身を磨くために使わなくてはならない時間の一部が、結局はコミュニケーションをとるための言語習得に費やされる。
言語が障壁となり、文化の違いが溝となれば、それらの障害を乗り越えようとする時間が有望な若手ライダーたちから速くなるための時間を奪っているのだ。