そして2019年からトライアンフエンジンを使用することになり、NTSの車体もN7Tとなる。ところが、シーズン中にライダーがケガを負ったり、体調を崩すことが2シーズン続いたこともあり、またMoto2のレベルの高さから厳しい戦いが強いられた。しかし、世界選手権3年目の2020年、ボ・ベンスナイダーが予選でたびたび上位に顔を出し、ダイレクトでQ2に進んだり、トップ10でチェッカーを受けるようにもなってきた。バレンシアGPでは8位に入り、初めてのシングルフィニッシュも達成している。

2021年のNTS RW Racing GPは、ライダーをMotoGP経験もあるマレーシア人のハフィス・シャリンと、ベルギー人の16歳、バリー・バルタスのふたりに総入れ替えすると発表した。パンデミックの影響から、車体は大幅なアップデートが禁止。NTSにとっては大きな武器を取られてしまった形だが、軽量化など許された範囲での細かい部分を煮詰めていくという。平行して2022シーズン用に体制の強化を図っていくが、福島からヨーロッパの現場への移動が難しい状況は、コンストラクターとしても歯がゆい思いだ。
元々、自身もレーシングライダーだったNTS代表の生田目さんは言う。「自分たちで造ったバイクが、世界の舞台でどこまで戦えるのか、とことん勝負したい」。現在、唯一の日本製Moto2マシンを造るNTS。世界の頂点を目指すその姿は勇ましく輝いている。


