さて、開幕戦カタールGPではミゲール・オリベイラ(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)の13位が最上位という結果に終わったKTMである。第2戦ドーハGPでは、ビンダーが8位に入った。18番手スタートだったのだから、大健闘だろう。
KTMはドーハGPで、前戦とは異なるタイヤを履いていた。すべてのKTMライダーがフロントにミディアムタイヤを選択したのである。ここがカタールGPとの違いだった。
開幕戦のKTMは、フロント、リヤともにソフトタイヤを選択。しかし、ビンダーもオリベイラもフロントタイヤの右側が終わってしまい、ペースを上げられなかったと語っていた。

「僕たちにとってはとても厳しいレースだった。開幕戦との大きな違いは、フロントタイヤが最後までもったこと。先週は残り9周だったけれど、(今回は)すべてのレースで攻められた」と、第2戦を終えてビンダーは語った。
とはいっても、ミディアムタイヤでのレースは簡単なものではなかったようだ。
「3回も(ミディアムタイヤで)予想外のクラッシュしたことを考えると、選ぶのはかなり怖かったよ。でも、選択肢がなかった。ソフトタイヤは選べなかったんだ」
予選に履いたフロントタイヤが2度目のアタックまでもたなかったことで、好むと好まざるにかかわらずミディアムタイヤを選ばなければならない、とわかったという。そしてさらに、ビンダーは自身の走りをタイヤに適応させた。
「タイヤの片側からもう片側に切り返すときには、細心の注意を払った。ほとんどバイクが立った状態でブレーキをかけ、ゆっくりと(コーナーへ)入らないといけなかった。バイクを傾けた状態でブレーキングをすれば、フロントがロックしてしまう。だから、僕は自分のライディングスタイルを少し変えないといけなかった。特に、右コーナーの進入でね。でも、それを理解すれば、うまく前に出ることができたよ」
チームメイトのオリベイラは15位でレースを終えたが、これはトラブルが発生したことが大きかった。開幕戦後、オリベイラは「カタールでは、僕たちはソフトタイヤを使いたくて選択しているのではなくて、ほかのタイヤを選べないので使っている。ミディアムタイヤはカーカスとラバーのコンビネーションがよくない」と語っていたが、ミディアムタイヤは第2戦ドーハGPの決勝レースでうまく機能したようだった。

「もしフロントにソフトタイヤを履けば、10周後にはタイヤがもうもたなくなるとわかっていた。だからミディアムタイヤでいくことにしたんだ。そして、それはうまくいったよ。ブレーキング時の安定性、ブレーキのパフォーマンスを考えれば、それはベストなタイヤではなかった。かなり揺れがあったからだ。でもアンダーステアでもなかったね」と、オリベイラはミディアムタイヤでのレースを振り返った。
KTMにとっては、おそらく難しい決断ではあっただろう。けれど、フロントにミディアムタイヤを履くという選択と、ビンダーのような走り方の適応など、小さな変更や挑戦が重なり合って、総合的によい結果をもたらした。
ところで、オリベイラに発生したトラブルは、ダッシュボードが表示されなくなるというもの。シフトチェンジのタイミングを知らせるライト、選択中のギヤやマッピング、タイヤの情報を得られない状態だった。
沈黙するダッシュボードのままシフトチェンジを余儀なくされたレースにどう適応したのか、と問われてオリベイラはこう答えていた。
「とても孤独なレースだったし、何度もシフトミスをした。カタールでは、(シフトチェンジのタイミングを示す)シフトライトはとても重要だ。感覚で走ろうとしたんだけどね。カタールでは、とてもたくさん走ってきたから。(ダッシュボードが表示されているときと)だいたい同じポイントでシフトチェンジしようとした。でも、あとからデータを見ると、僕のシフトチェンジはそのとおりではなかった……(苦笑い)」
MotoGPライダーにとって、ダッシュボードからの情報がいかに重要なものだったのかを伺わせるコメントである。また、超高速で競い合うレースの中でそうした様々な情報を得ながら正確にバイクを走らせていることを、あらためて想像させた。
少々脱線してしまったが、ホンダとKTMの第2戦は少し違ったものだったように見える。そして、第3戦ポルトガルGPの開催地アウトドローモ・インターナショナル・アルガルベは、難しいレイアウトのサーキットだ。そこではまた異なる展開を見せるのだろうか。