更新日: 2023.08.10 14:57
中上貴晶「結果が出ない。でも、次に向けて何もない」。己を奮い立たせて過ごした前半戦/MotoGP
こうした状況のなかで、中上はホンダのレギュラーライダーで唯一、前半戦の8戦に参戦し続けた。スプリントレースではスペインGP、決勝レースではアメリカズGPの転倒リタイアを除いて、完走している。シーズン前半戦のベストリザルトは、オランダGPの8位だ。
苦況のなかで、どのようにモチベーションを維持してきたのか? と、オランダGPの決勝レース後に尋ねた。中上は、答えにくそうに少し、笑った。
「非常に難しいところですね。僕もやっぱり、この3連戦で悩むこともあったんです。状況がうまくいっていなくて結果も出ていない。でも次に向けて何かあるのか、というと、何もない状態で……。次のレースも、どんなに頑張ってもぎりぎりポイント獲得できるかできないか、という順位での戦いが見えているわけですから。そんななかで、モチベーションを保つのはすごく難しいところでもありました」
「ただ、自分のパフォーマンスを失っているわけじゃないし、自分はこの順位(を走るライダー)じゃない、ということも証明したいという思いもありました。だけど、リスクを負うと転倒して怪我をしてしまうんです。リスクがあまりにも高い状態でした。今でも難しいですね」
「なので、奮い立たせるというか。チームがあっての自分でもあるので、よりチームとのコミュニケーションをとったり、あまりネガティブなことだけを話さないようにしたり。細かなところではありますが、笑顔になるようなことをして、次に走るときに、『どうせだめだから』ってネガティブな状況にならないようにしました」
「こういう状況なので、モチベーションとして難しいところは、正直、あります。ただ、失ってはいない。後ろ下がりにはならないように、常に前向きにベストを尽くすよう、毎セッション走っています」
答えには、中上の苦悩が詰まっていた。その言葉は、ポジティブとネガティブの間で揺れていた。シーズン前半戦を、中上はまさに振り子のような心中で送っていたのかもしれない。