更新日: 2023.09.04 21:32
A.エスパルガロとビニャーレスが成し遂げた歴史的ワンツー。二人を結びつけた3年前のモーターホーム/第11戦カタルーニャGP
二人のアプリリアライダーは、クールダウンラップでマシンを交換してパルクフェルメに向かった。エスパルガロはゼッケン12を付けたビニャーレスのマシンに、ビニャーレスはゼッケン41を付けたエスパルガロのマシンに。これまでの苦労を分かち合うように手を取り合い並走するシーンは、素晴らしく感動的だった。これを言い出したのは、エスパルガロだったのだとか。
「『バイクを変えよう』と提案したら、彼は『マジかよ』って顔をして僕を見ていたよ」とエスパルガロは笑った。
そしてエスパルガロは、3年前、2021年のことを話し出した。ビニャーレスはそのとき、シーズン途中でヤマハを去り、アプリリアに移籍している。
「3年前、マーベリックがオーストリアで苦戦して、彼はすっかり落ち込んでいた。(アプリリアに来ることについて)彼は確証が持てなかったみたいだ。でも僕は彼にこう言ったんだ。『君はすごく強い。僕たちはバイクをトップに押しやるだろう』ってね。これはアプリリアや自分たちへのプレゼントみたいなものなんだ。信じてハードワークに取り組んだんだから。二人の強いライダーが一緒に取り組んだチームワークが報われたよ。今日の結果はロマーノ(・アルベジアーノ)、マッシモ(・リボラ)、ノアーレのみんなへのプレゼントだよ」
ビニャーレスも、そのときのエピソードについてこう触れる。
「アレイシが言ったように、3年前、アレイシのモーターホームで僕たちは話をした。でも、僕は(アプリリアに行くかどうか)迷っていた。すごくいい契約がある状態で、そういう賭けをするのは難しい。でも最終的に、僕は自分に、アプリリアに賭けたんだ。もちろん、アレイシの存在も大きかった。さっきアレイシも言っていたけど、速いライダー二人なら、ひとりよりもずっと多くのことができるからね」
歴史的なワンツーを果たしたカタルーニャGP。しかしエスパルガロは、ライバルとの差についてこう述べている。
「僕としては、まだライバルとの差はあると思う。ただ、カタロニアのようなサーキットでは、アプリリアはとても強い。でも、僕たちは成長している。歩みを止めることはない。クラッチについても取り組んでいるし、エンジンについても取り組んでいる。来週の月曜には、多くの新しいものにトライするだろう。今、アプリリアのライダーでいられてうれしい。アプリリアでチャンピオンが誕生するまで仕事を続けるよ」
確かに、現状でアプリリアが常にドゥカティに匹敵するほど速いかといえば、まだそこまで至ってはいないだろう。エスパルガロ自身が語っているように、得意なサーキットとそうではないサーキットでアップダウンがあり、安定した結果を残せているわけではない。ただ、その二つの間の差が小さくなってきているのは確かだ。
2022年のアルゼンチンGPで、アプリリアはエスパルガロによって最高峰クラスにおける初めての優勝を飾った。2022年の結果により、コンセッション(優遇措置)を失って挑んだ2023年は、イギリスGPで、やはりエスパルガロが今季初優勝を果たしている。だが、決勝レースで二人のアプリリアライダーが表彰台に立ったことはなかった。今回のワンツーは、ライダーを含めた組織的な尽力とその方向性が一貫しており、しっかりとRS-GPの改善につながっているのだという証明に見える。2017年から長くRS-GPを開発し続けてきたエスパルガロだけではなく、2位のビニャーレスも、そして一時は3番手を走って5位で終えたミゲール・オリベイラ(クリプトデータRNF・MotoGPチーム)も力強い週末を送ったのだから。