そしてホンダとヤマハの苦戦もまた、日本GPで変わらなかった。そんな苦戦した日本メーカー勢のなかで、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が健闘した。
予選では日本メーカー勢として唯一Q2に進出。スプリントレースでは7番グリッドからスタートし、7位でゴールした。そして決勝レースでは、やはり7番グリッドからスタートして3位を獲得。自身としては今季初、2022年オーストラリアGP以来の表彰台となった。
マルケスが3位を獲得した要因に、雨という天候とフルウエットコンディション、そして12周で赤旗終了という状況があったのは間違いない。ただ、それに加えてマルケスの決意と性能がなくてはならなかった。
マルケスは「スクリーンに雨粒が落ちたのを見て、『よし、行ってみよう』と思ったんだ」と言う。通常とは違うコンディションのなかで、優勝、あるいは表彰台を獲得するチャンスがあるかもしれないと考えたのだ。
「(1周目でピットインしたが)スリックでもう1周走ることはできたんだけど、トップグループにいて、みんなピットに入っていたから、ピットに入る(決断は)簡単だった。このサーキットでは、ウエットタイヤだと速いってわかっていたからね。特に昨年は、雨の予選でポールポジションを獲得しているし。トップグループのライダーがピットインしたので僕もピットインした」
そして見事に3位を獲得した、というわけだ。決意を実現に導くポテンシャルがあるからこそとはいえ、マルケスが目的に向かう集中力は尋常ならざるものがある。
また、マルケスは日本GPで、もてぎで表彰台を獲得したかったのだという。MotoGP.comのなかで、こう語っていた。
「今年最初の表彰台がホンダのホーム。首脳陣の前で獲得しなければいけなかった」
シーズンも終盤に入ろうとしているこの時期、マルケスに対する様々な憶測はいまだ収束の兆候を見せない。「首脳陣の前で獲得しなければいけなかった」という言葉が、マルケスの将来への決断にかかわっているように思われるのだが……。これもまた、憶測の域を出ない。
ただ、日本GP中にホンダの状況として大きな変化はあった。HRC開発室室長が國分信一氏に代わり、佐藤辰氏が就任したと、MotoGP.comが報じている。ホンダの苦戦の大きな理由はエンジンではないかと見られてきたが、MotoGPマシンをつくるのもそれを走らせるのも、チームという環境をつくるのも、人でしかありえない。今回の人事は変化をもたらすことになるのだろうか。