Jun NISHIKAWA/Fumiaki HARA

 スーパーカーファンにとって、これほど羨ましいことはない。ランボルギーニ社に、彼は“世界の20ベスト・オーナー”のひとりだと認められたわけですから。時代がフェルッチオ時代だったなら、スーツを着込んだ赤ら顔のおじさんが、ごつい手を差し出して、「君もこれでランボルギーニファミリィの一員だよ」、などと言いながら抱きしめてくれたことでしょう。

 今となってはフェルッチオが天国から手を振ってくれていることを願うばかりですが、A氏はチェンテナリオのオーダーを通じて、正にファミリィ同然の厚遇で何度もサンターガタに招かれています。

 世界20台限定。しかも日本へやってくるクーペのチェンテナリオはA氏の個体のみ。仕様を決めるにあたって、彼がまず頭を悩ましたのは、カラーリングでした。ジュネーブショーのチェンテナリオ発表会に参加したA氏でしたが、ショーカーと同じビジブルカーボン仕様にするかどうかだけはすぐに決めなければならず、結局、コストも正確には知らされないままに、ビジブルカーボンを選びます。

 しかも、当初はショーカーと同じブラックカーボン仕立てのみ、という話だったものが、サンターガタのアド・ペルソナム(特注部門)に彼が改めて出かけてみれば、ブラック以外にレッド、ブルー、グリーンが使えるという。悩みに悩んだ結果、彼はレッドカーボン仕様を選びました。

 赤カーボン仕様と決めたのち、日本に1台、つまりは日本代表であることを意識した氏は、さし色にホワイトをチョイスします。こうして、日の丸をイメージしたチェンテナリオが生まれることになりました。クーペ・ロードスターを通じて、エクステリアにレッドカーボンを使ったチェンテナリオは今のところ他にない、らしい。光の具合でいろんな表情をみせる、赤いカーボン&レザーインテリアも鮮やかなA氏のチェンテナリオは、いっそう貴重な個体となったのです。

 仕様を決めるために二度、生産途中で一度、そして完成し日本へ送り出す日にもう一度、ジュネーブショーをカウントすれば合計なんと5回も、A氏はヨーロッパへ飛んでいます。その思いの強さには、ただただ敬服するほかありません。そんなA氏とチェンテナリオに負けない、熱きスーパーカーオーナーとその愛車が、この本の主人公。新進気鋭のフォトグラファー・悠佑氏の撮り下した写真には、それぞれのオーナーたちの果たした“夢のまた夢”が果たせぬ多くの人へと発したメッセージが宿っているかのようです。

 夢を、絶対に、あきらめるな、と……。

自動車ライター西川淳2017年8月21日ペブルビーチにて


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