特に印象に残ったのはオーディオシステムだ。XC60の車内には、高級スピーカーブランドBowers&Wilkins(バウワース・アンド・ウィルキンス)製のスピーカーが15箇所に設置され、車内で音楽を流すとまるでコンサートホールにいるかのようなサウンドを楽しむことができた。ちなみに、このオーディオシステムはT5の場合はオプションで価格は42万円(税込)とかなり高価だが、専用設計された高級スピーカーが15個ついていると考えると安いと言えるだろう。


エンジンは水冷直列4気筒DOHC16バルブの2リッターターボで、最大出力は254馬力を発揮する。アクセルを踏んで発進すると、ターボ車でしばしば感じる一瞬急加速するような感覚はほぼなく、スッとスタートを切ってくれる。また加速時も電子制御式8速ATのトランスミッションがいい仕事をしてくれるのだ。高速走行時にはアクセルを強く踏み込むと、気持ちよくエンジンが回ると同時に、メリハリの利いた変速制御で力強い加速を感じることができた。ただ少し気になった部分がアイドリングストップだ。エンジン停止後、発進するときの振動が日本車に比べて少し大きく、人によっては若干違和感を感じるかもしれない。



そして、電子制御式のエアサスペンションも走りの楽しさ演出してくれる。このサスペンションは、ドライブモードや車速によって車高を一定に保ち、その時々の路面状況に応じた最適な調整を行うものだ。ドライブモードは5つ選択可能で、それぞれのモードでの違いを分かりやすく体感することができた。
エアサスペンションのおかげもあって、おうとつが多い道路でも不快感なく走ることができ、スポーツ走行寄りのモードにすると少し速い速度でコーナーを曲がってもしっかりと足元をささえ、安定して曲がることができたのだ。もはやひと昔前のサスペンションの概念が通用しない領域にまで、このSUVの足回りは到達しているのだと感じた瞬間だった。
様々なシーンに合わせて走りの質を変化させてくれる電子制御式エアサスペンションはXC60の最高グレード、T8インスクリプションには標準装備されている。ちなみにT5でこの走りを体感するには30万円(税込)のオプションパーツが必要となる。
既報のとおり、走りの性能だけでなく、安全装備も充実していることもボルボ車の特徴でもある。ボルボは「2020年までに新しいボルボ車での交通事故による死亡者や重傷者をゼロにする」という「VISION 2020」を掲げており、安全装備に相当な力を入れているのだ。XC60でもそのコンセプトは変わりなく、全車速追従機能付アダプティブ・クルーズ・コントロール、ステアリングサポート、衝突回避・軽減フルオートブレーキシステム、360度ビューカメラといった安全機能が16種類以上も備わっている。これらは、XC60すべてのラインアップにオプションではなく標準で装備。安全装備に関しては多くのメーカーがオプションとして展開するが、それがすべて標準で装備されていることにボルボの安全性への本気度を改めて知らしめられた思いがした。T5 AWDインスクリプションの車両価格は679万円(税込)だが、搭乗者の命を守る装備が16種類以上も備わっていることを考えるとお得に感じる。
今回、初めてボルボ車に試乗したが、受賞の理由に挙げられている点にまったくの偽りはないと感じた。走りの面ではエアサスペンションの効果がかなり表れていて、今回は持ち込めなかったが、峠道のようなコーナーが多いワインディングロードでも軽快に走ってくれそうだ。また車体も本格的SUVに近い見た目だが、そういった車両よりは少し小さいため、日本特有の細い道でも問題なく走ることができるだろう。XC60は、街乗り、買い物、長距離ドライブといったすべての走行シーンをカバーしてくる1台として使えるだろう。



