高速を降りて、いざ峠道へ。まずは緩やかなアップダウンが多い道を走り出すと「本当にコンパクトカーなのか?」と思うくらい、きびきびとした走りをしてくれる。特に感じたのは応答性の良さ。カーブが連続する場所でも、ロールが少なく、ブレーキング時のピッチングも穏やかだった。
ヴィッツGRは、スポット溶接の追加や、GR専用のブレース(ボディを補強するパーツ)の追加が施されており、高剛性となったボディが高い応答性を生み出している。この高剛性ボディと標準装備のハイグリップタイヤは、コーナーリング中の安定性向上にも貢献しているようだ。

また、ヴィッツGRの特徴となるのが全日本ラリー選手権で培ったノウハウが織り込まれたという『SPORTモード』だ。『SPORTモード』はシフトレバー下にあるボタンで切り替え可能で、このモードにするとエンジンが高回転域で変速するようになり、通常よりもパワフルな走りを体感することができる。傾斜のきつい上り坂はもちろん、サーキット走行でも効果を発揮するだろう。
続いて、シフトをマニュアルモードにして走ってみる。変速はシフトレバーかパドルシフトで行うことが可能だ。MT車と同等まではいかないが、それでも変速のレスポンスは良い。



昔のCVT車にありがちな1テンポ遅れて変速されるような感覚はなく、素早い変速を行ってくれるので、コーナー出口からの加速もスムーズに行えた。ちなみにパドルシフトはDレンジのままでも変速が可能となっており、一定時間パドルシフトを使用しないとふたたびDレンジに戻る仕組みとなっている。
GAZOO Racingが放つヴィッツGRは、ヴィッツの素性はそのままに、走りの部分が大きくグレードアップした印象を受け、想像以上に走りを楽しめる1台だった。価格も税込で229万2840円からとスポーツモデルにしては割高感がないのもうれしいところ。
ただし、ベース車が低排気量のコンパクトカーということもあり、急勾配の上り坂などでは、もう少しパワーがほしいと感じることもあった。しかし、それはあくまでも限られた場面でのみ。ふだんの街乗りや高速道路、レジャードライブで不満を感じることはないだろう。
足回りが硬めにセッティングされているが、乗り心地も悪くない。ヴィッツGRは、普段使いとスポーツ走行を両立させたい人にはおススメできる1台と言えるだろう。




【撮影協力】
山中湖フィルムコミッション