更新日: 2019.10.15 17:53
刺激を抑え、正統派セダンの道を進むスバル WRX STI【 ベースマシン一刀両断!!】
Photo:SUBARU
ともかく、その生き残りがスバルWRX STIである。ベースモデル的位置づけ(といっても300psもあるのだが)としては、WRX S4というCVT搭載車も用意されている。
もちろんインプレッサ時代からの進化は大きい。ボディは3ナンバー化され、スバルが苦手としていたインテリアの質感も、大声で文句を叫びたくなるほどではなくなった。
前方視界を確保するために“伝統的に”立ち気味にしていたウインドスクリーンは、空力面を考慮し大きく寝かされている。高性能スポーツセダンへと進化しているのだ。
もちろん、そこには礎としていたラリーへ参戦しなくなった影響も小さくないはずだ。同時に、直接的なライバルであったランエボが消滅したことで、無益なサーキットでのラップタイム競争から開放され、本来あるべき進化系へと変化したのだろう。
「すべてを犠牲にした速いクルマ」から「速くても、まぁ快適なクルマ」へと、至極真っ当に進化している。
エンジンは伝統の、というより伝説のというべきEJ20。S4にはより新しいFA20が搭載されているが、スバルにとっては作り分ける意味があるのだろう。たしかにレッドゾーンまでシャープに吹け上がるフィーリングは見事で、スポーティではある。
だが低回転域のトルクは明らかに不足していて、同じ2リッターターボの現行シビック・タイプRに搭載されるK20Cと比較すると、“時間の流れ”を感じさせる。
またスバルがアピールするシンメトリカルAWDにも、WRX STIに乗るとそこに欠点があることが分かる。エンジンのせいか、パワートレイン全体の抵抗感が強く、クルマ全体が重く感じてしまう。アクセルを踏み込んでいる時は悪くないのだが、そんなのは走行シーンの1%にも満たない。
そういう意味では、平成時代のクルマなのかもしれない。だから、古き良き時代を感じたい人、平成をもう少し引きずりたい人には、オススメできるクルマだ。少なくとも、普段使いもこなせる柔軟性も持ち合わせている。
とはいえ、個人的にはスバルに画期的な進化を期待したい。現代においてはデメリットしか存在しない水平対向エンジンを使い続けるという苦難の道を信念を持って歩む覚悟は、きっと新しい価値を生み出すに違いないと思いたいのだ。
そしてその時には、鳥居型のリヤスポイラーも排除してもらいたい。もう安物セダンをベースにしていないのだから、ベースモデルから空力性能を作り込めるはず。大きなスポイラーがないと空力が成立しない、なんて情けないことは言わないでほしいものだ。
■スバル WRX STI 主要諸元
車体 | |
---|---|
車名型式 | スバルCBA-VAB |
全長×全幅×全高 | 4595mm×1795mm×1475mm |
ホイールベース | 2650mm |
トレッド 前/後 | 1530/1540mm |
最低地上高 | 140mm |
車両重量 | 1490kg |
乗車定員 | 5名 |
駆動方式 | AWD |
トランスミッション | 6速MT |
ステアリングギヤ形式 | ラック&ピニオン |
サスペンション前/後 | ストラット/ダブルウイッシュボーン |
ブレーキ 前/後 | ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク |
タイヤサイズ 前・後 | 245/40R18 ・245/35R19 |
エンジン | |
型式 | EJ20 |
形式 | 水平対向4気筒DOHCツインストロークターボ |
排気量 | 1994cc |
内径×行程 | 92.0×75.0mm |
圧縮比 | 8.0 |
最高出力 | 227kW(308ps)/6400rpm |
最大トルク | 422Nm(43.0kgm)/4400rpm |
使用燃料 | 無鉛プレミアムガソリン |
タンク容量 | 60L |
auto sport 2019年5月10日号 No.1506より転載