クルマ ニュース

投稿日: 2019.10.16 07:30
更新日: 2019.10.15 17:53

刺激を抑え、正統派セダンの道を進むスバル WRX STI【 ベースマシン一刀両断!!】


クルマ | 刺激を抑え、正統派セダンの道を進むスバル WRX STI【 ベースマシン一刀両断!!】

 ともかく、その生き残りがスバルWRX STIである。ベースモデル的位置づけ(といっても300psもあるのだが)としては、WRX S4というCVT搭載車も用意されている。

 もちろんインプレッサ時代からの進化は大きい。ボディは3ナンバー化され、スバルが苦手としていたインテリアの質感も、大声で文句を叫びたくなるほどではなくなった。

 前方視界を確保するために“伝統的に”立ち気味にしていたウインドスクリーンは、空力面を考慮し大きく寝かされている。高性能スポーツセダンへと進化しているのだ。

 もちろん、そこには礎としていたラリーへ参戦しなくなった影響も小さくないはずだ。同時に、直接的なライバルであったランエボが消滅したことで、無益なサーキットでのラップタイム競争から開放され、本来あるべき進化系へと変化したのだろう。

「すべてを犠牲にした速いクルマ」から「速くても、まぁ快適なクルマ」へと、至極真っ当に進化している。

 エンジンは伝統の、というより伝説のというべきEJ20。S4にはより新しいFA20が搭載されているが、スバルにとっては作り分ける意味があるのだろう。たしかにレッドゾーンまでシャープに吹け上がるフィーリングは見事で、スポーティではある。

AWDとともにスバルの看板とも言える存在であるEJ20は1989年に登場。それ以来実に30年もの間、絶えず改良・熟成され続け同社の主力エンジンであり続けている。
AWDとともにスバルの看板とも言える存在であるEJ20は1989年に登場。それ以来実に30年もの間、絶えず改良・熟成され続け同社の主力エンジンであり続けている。

 だが低回転域のトルクは明らかに不足していて、同じ2リッターターボの現行シビック・タイプRに搭載されるK20Cと比較すると、“時間の流れ”を感じさせる。

 またスバルがアピールするシンメトリカルAWDにも、WRX STIに乗るとそこに欠点があることが分かる。エンジンのせいか、パワートレイン全体の抵抗感が強く、クルマ全体が重く感じてしまう。アクセルを踏み込んでいる時は悪くないのだが、そんなのは走行シーンの1%にも満たない。

 そういう意味では、平成時代のクルマなのかもしれない。だから、古き良き時代を感じたい人、平成をもう少し引きずりたい人には、オススメできるクルマだ。少なくとも、普段使いもこなせる柔軟性も持ち合わせている。

華美な装飾を控え、黒を基調にシンプルにまとめられた室内。計器類の視認性も高く、スイッチ類もベストな位置に配置されている。
華美な装飾を控え、黒を基調にシンプルにまとめられた室内。計器類の視認性も高く、スイッチ類もベストな位置に配置されている。

 とはいえ、個人的にはスバルに画期的な進化を期待したい。現代においてはデメリットしか存在しない水平対向エンジンを使い続けるという苦難の道を信念を持って歩む覚悟は、きっと新しい価値を生み出すに違いないと思いたいのだ。

 そしてその時には、鳥居型のリヤスポイラーも排除してもらいたい。もう安物セダンをベースにしていないのだから、ベースモデルから空力性能を作り込めるはず。大きなスポイラーがないと空力が成立しない、なんて情けないことは言わないでほしいものだ。

■スバル WRX STI 主要諸元

車体
車名型式 スバルCBA-VAB
全長×全幅×全高 4595mm×1795mm×1475mm
ホイールベース 2650mm
トレッド 前/後 1530/1540mm
最低地上高 140mm
車両重量 1490kg
乗車定員 5名
駆動方式 AWD
トランスミッション 6速MT
ステアリングギヤ形式 ラック&ピニオン
サスペンション前/後 ストラット/ダブルウイッシュボーン
ブレーキ 前/後 ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ 前・後 245/40R18 ・245/35R19
エンジン
型式 EJ20
形式 水平対向4気筒DOHCツインストロークターボ
排気量 1994cc
内径×行程 92.0×75.0mm
圧縮比 8.0
最高出力 227kW(308ps)/6400rpm
最大トルク 422Nm(43.0kgm)/4400rpm
使用燃料 無鉛プレミアムガソリン
タンク容量 60L

auto sport 2019年5月10日号 No.1506より転載


関連のニュース