Text&Photo:Shinya Okamura<br>Photo:BGTC

 
 スタイリング面の要求により、ホイールベースが100mmも短くなっているのは、21世紀以降、最も醜悪な外見のクーペであるCV35/CV36スカイラインクーペに対するアンチテーゼなのだろう。

 こうした社内抗争的な動きもまた、ニッサンのお家芸である。

 とはいえ、モデル末期を迎えているZ34は完成度も高く、仕上がっている。これはニッサンが新型車開発が極めて少なく、リソースに余裕があることも一因となっているだろう。

2008年に登場した6世代目のニッサン・フェアレディZ
2008年に登場した6世代目のニッサン・フェアレディZ

 トヨタ86に乗ると、いつもZが恋しくなる。低回転域からしっかりとトルクが出て、反応してくれるエンジンだけとっても、86とZの差はかなり大きい。ニッサンV6の伝統なのかシャープさが薄く、力任せな感触ではあるが、エンジンをコントロールするNAの楽しさは味わえる。

 そんなエンジンには7速ATのほうがマッチングも良く、ストレスも少ない。しかし、6速MTのフィーリングも上々で、いざ買うとなるとなかなか悩むことになるだろう。

 コンパクトなキャビンだが、少なくともドライビングする空間としては余裕がある。86のほうがルーフが低く、タイトで息苦しい。高さはないが、ハッチバックなので荷物も一応は積みやすい。日常的に使えるスポーツカーと言っていいだろう。

 乗り心地は、19インチタイヤ装着状態でも厳しくない。デコボコの路面では強いスタビライザーの影響で揺すられるものの、それ以外はフラットに近い。

 ボディ剛性を高めた成果だが、それを部分剛性で実現したためかロードノイズは大きめだ。一方で、エンジン音はセーブされており、それほど大きな音が侵入することはない。

かつて“セキュレタリーカー”=秘書のクルマとも呼ばれ、つまり知的な女性が似合うと言われていたZ。Z34にモデルチェンジした際、エンジンも排気量3.7LのVQ37VHRが採用され、最高出力336PS/最大トルク37.2kgmを発生するなど、なんともマッチョな動力性能を誇る。
かつて“セキュレタリーカー”=秘書のクルマとも呼ばれ、つまり知的な女性が似合うと言われていたZ。Z34にモデルチェンジした際、エンジンも排気量3.7LのVQ37VHRが採用され、最高出力336PS/最大トルク37.2kgmを発生するなど、なんともマッチョな動力性能を誇る。

 個人的には、エアロを外したNISMOの6速MTをベストに推す。あのエアロはアイディンティティなのかもしれないが、子供っぽくて、クルマの質感を損なっている。ノートやマーチとは違う設定が必要だろう。
 
 スポーツカーは、いつも一緒に行動したい、クルマ好きにとってのベストフレンドである。ドンチャン騒ぎしたり、カラオケで熱唱したり、海を見ながらボーッとしたり、目的なく遠くまで行ってみたり⋯⋯。そんな親友的な存在=スポーツカーに、Z34はかなり近づいているように思える。

運転席まわりは。視認性の良い大型の3連メーターやセンターに鎮座する3連のサブメーター(油温計、電圧計、デジタル時計)、滑りにくい素材を使用したシートなど、随所に走りを追求する姿勢があふれる。
運転席まわりは。視認性の良い大型の3連メーターやセンターに鎮座する3連のサブメーター(油温計、電圧計、デジタル時計)、滑りにくい素材を使用したシートなど、随所に走りを追求する姿勢があふれる。

 そのZ34にも生産終了のウワサがある。しかし、これを機にスポーツカーとして原理的なモデルへとモデルチェンジしてもらいたいものだ。

 電動化や自動化はスペースや重量に余裕のある他のクルマに任せて、そういう時代だからこそ求められる、シンプルなスポーツカーに生まれ変わってほしい。

■ ニッサン フェアレディZ Version ST 主要諸元

車体
車名型式 ニッサン CBA-Z34
全長×全幅×全高 4246×1845×1315mm
ホイールベース 2550mm
トレッド 前/後 1540/1565mm
最低地上高 120mm
車両重量 1540kg
乗車定員 2名
駆動方式 2WD(後輪駆動)
トランスミッション 6速MT/7速AT
ステアリングギヤ形式 ラック&ピニオン式
サスペンション前/後 独立懸架ダブルウイッシュボーン式/独立懸架マルチリンク式
ブレーキ 前/後 ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ 前・後 245/40R19・275/35R19
エンジン
型式 VQ37VHR
形式 V型6気筒DOHC
排気量 3696cc
内径×行程 95.5×86.0mm
圧縮比 11.0
最高出力 247kW(336ps)/7000rpm
最大トルク 365Nm(37.2kgm)/5200rpm
使用燃料 無鉛プレミアム
タンク容量 72L

auto sport 2019年5月24日号 No.1507より転載

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