Text:Shinya Okamura<br>Photo:Toyota

 非常にややこしいのだが、通常の『GRスポーツ』に搭載されるCVTは7速シーケンシャル仕様で、10速シーケンシャル仕様は『GR』に装備されている。『GRスポーツ』というのは、いわゆる『GR』のベーシックモデルで、『GR』のほうがチューニングが進んだ上級モデルとなる。

 その10速シーケンシャルモードを持つCVTだが、“単純に3速増えてクロスになっているだけでなく、CVTの制御そのものを見直してダイレクト感を増している”というのが能書きだ。

 トランスミッションというのは結局、“エンジンパワーをどう処理するか”という中間管理職なので、エンジンの質が高くないと、トランスミッションの有り難みは感じられない。世界で初めて量産電子式CVTを積んだのはスバル・ジャスティだったが、あの時もエンジンが悲惨なのか、CVTが不出来なのか、まったく不明だった。

トヨタ・ヴィッツ『GR』(CVT)
トヨタ・ヴィッツ『GR』(CVT)

 109psを発生するエンジンに関して言えば、最高出力は下がるが回転数の上限を5000rpmほどにしたほうが、低回転域のレスポンスが大幅に改善し、はるかにスポーティに走れるようになるはずだ。CVTの制御も楽になる。シーケンシャルモードなど不要で、通常モードのままで楽しく走れるダイレクト感こそ、本来目指すべきだったものではないだろうか。

 5速MTで走らせても、このエンジンはスポーティとは縁遠い。スポーティモデルといえども、このクラスはエコ指向なエンジンばかりだが、ライバルたちと比較できるレベルにはない。

『GR』と通常の『GRスポーツ』では、搭載されるCVTが異なること以外にも、ボディやサスペンションがより強化されるなど、走りに関わる部分で差別点が多く見られる。また、それはインテリアも同様で、『GR』(写真)にはロゴ入りの小径ステアリングやアルミペダル、さらに専用のシルバープレートアナログメーターが奢られるなど、コクピットもレーシーに演出されている。
『GR』と通常の『GRスポーツ』では、搭載されるCVTが異なること以外にも、ボディやサスペンションがより強化されるなど、走りに関わる部分で差別点が多く見られる。また、それはインテリアも同様で、『GR』(写真)にはロゴ入りの小径ステアリングやアルミペダル、さらに専用のシルバープレートアナログメーターが奢られるなど、コクピットもレーシーに演出されている。

 『GR』と『GRスポーツ』では、ノーマルより溶接点を増やしてボディ剛性を高め、『GR』にはさらにブレースも追加している。タイヤの性能を考慮するとボディ下まわりの剛性が不足するのは分かるのだが、上側を補強していないためステアリングの応答遅れが大きくなった。これにはおそらくリヤハッチまわりを補強してやるのが効果的だろう。

 また部分的に剛性を上げた影響でロードノイズの侵入も大きく、応答遅れの拡大も相まって、“バランスを崩したチューニングカー”的な雰囲気に仕上がっている。

 ヴィッツレースは日本の入門用レースとして、大きな役割を果たしてきた。なにしろ20年の歴史を持ち、いまでも高い人気を持っているのだ。しかし、そのベースとなるヴィッツには、そうした魅力は感じられないのが、とても残念である。

ヴィッツ『GR』はアルミペダルを採用。レーシングカーにベクトルを振っていることがわかる。
ヴィッツ『GR』はアルミペダルを採用。レーシングカーにベクトルを振っていることがわかる。

■トヨタ・ヴィッツ GR (CVT) 主要諸元

車体
車名型式 DBA-NCP131-VLXBXV
全長×全幅×全高 3975mm×1695mm×1490mm
ホイールベース 2510mm
トレッド 前/後 1465mm/1450mm
最低地上高 120mm
車両重量 1060kg
乗車定員 5名
駆動方式 2WD(前輪駆動)
トランスミッション 自動無段変速機(Super CVT-i)
ステアリングギヤ形式 電動パワーステアリング
サスペンション前/後 ストラット式コイルスプリング/トーションビーム式コイルスプリング
ブレーキ 前/後 ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ 205/45R17
エンジン
型式 1NZ-FE
形式 直噴直列4気筒
排気量 1496cc
内径×行程 75.0mm×84.7mm
圧縮比 11
最高出力 80kW(109ps)/6000rpm
最大トルク 136Nm(13.9kgm)/4800rpm
使用燃料 無鉛レギュラーガソリン
タンク容量 42L

auto sport 2019年6月7日号 No.1508より転載

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