Rの乗り味はGTIとはまったく異なる。スポーツハッチ的なダンピングの効いたものではなく、サスペンションがゆったりとストロークするグランドツーリングカー志向。これは、可変ダンパーを“スポーツ”に切り換えても基本的には同じだ。
つまり、この310psの高性能マシンは、ごく普通のゴルフとしても使える。コンビニに買い物に行くのも苦痛ではないし、猛々しい排気音は室内だけに響いていて、外には影響しない。エンジンのモード如何で大人しくすることもできる。
というわけで、ゴルフRは高性能でもあり、ラグジュアリーでもある。ベースモデルの2倍という価格(約580万円~)も納得できるレベルだ。
ただし、スポーティなゴルフが欲しいなら、GTIを選択したほうがいい。GTIの軽快な動きはホットハッチの見本で、VW流の高いスタビリティの上に成立させている。


個人的には、可変ダンパーのつかない17インチタイヤモデルがベスト。ただ、モデル末期ということで、現在はGTIパフォーマンスというエボリューションモデルが展開されていて、これが245psのパワーと19インチタイヤを身につけている。熱さでいえば、それが最上だ。
スポーティモデルの良さは、単に高性能というだけではない。ドライバーの思いどおりに動くことはとても重要で、それは人間が扱うあらゆる道具にとってもっとも優先されるべき要素だ。
次元の低い乗り心地志向や、カタログを飾るための燃費、見栄え最優先で本質部分を値切って安物感満載にするコスト管理など、言い訳をたくさん用意するナマクラなスタンダードモデルでは、運転する楽しみを得にくい。
だが、ゴルフはスタンダードモデルから充分にスポーティであり、ドライバーが知覚を駆使して安全に楽しく走れる道具として仕上げられている。
単純な技術力はともかく、そうしたクルマ作りに対する姿勢で、日本メーカーは追いつく日が来るのだろうか?



■フォルクスワーゲン ・ゴルフR 主要諸元
車体 | |
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車名型式 | ABA-AUDJHF |
全長×全幅×全高 | 4275mm×1800mm×1465mm |
ホイールベース | 2635mm |
トレッド 前/後 | 1535mm/1510mm |
最低地上高 | 130mm |
車両重量 | 1510kg |
乗車定員 | 5名 |
駆動方式 | 4WD |
トランスミッション | 7速DSG |
ステアリング | 電動パワーステアリング |
サスペンション前/後 | マクファーソンストラット/4リンク |
ブレーキ 前/後 | ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク |
タイヤサイズ | 225/40R18 |
エンジン | |
型式 | DJH |
形式 | 直列4気筒DOHCインタークーラー付きターボ(4バルブ) |
排気量 | 1984cc |
内径×行程 | 82.5mm×92.8mm |
最高出力 | 228Nm(310kgm)/5500ー6500rpm |
最大トルク | 400Nm(40.8kgm)/2000ー5400rpm |
使用燃料 | 無鉛プレミアムガソリン |
タンク容量 | 55L |
auto sport 2019年11月15日号 No.1518より転載