クルマ ニュース

投稿日: 2020.08.19 13:10
更新日: 2020.08.20 16:04

約350kmのロングドライブで見えたマツダ SKYACTIV-Xの真骨頂


クルマ | 約350kmのロングドライブで見えたマツダ SKYACTIV-Xの真骨頂

 さて、あいにくの雨の中、マツダR&Dセンター横浜からSKYACTIV-Xを搭載したCX-30を走らせた。ルートは、首都高(K7)~東名高速(横浜青葉IC)~海老名JCT~圏央道(八王子JCT)~中央道を経由して、塩尻ICから一般道を走って奈良井宿を目指す。割合で言えば、高速道路8割、一般道路2割といった感じだ。

 試乗をしてみると、この緻密な制御が運転していてすごく繊細に伝わってくる。アクセルの開け方に対する反応がいい。

 靴の中で足の指を曲げる程度のアクセルの踏み加減や戻し具合をそのスピードに緩急をつけながらやってもみたが、しっかりとエンジンの反応が返ってくる。中央道の緩やかな上り坂で、先行車との間隔をキープしながら走らせてみても、追走が非常にラクだ。

 実際の数値的にも、SKYACTIV-Xはさらなる高圧縮比化と比熱比の大幅な向上により、同排気量のSKYACTIV-Gに比べて、全域で10%以上のトルク向上を実現している。

 空気を吸入する遅れがないため、ディーゼル並みに初期応答性が良い。巡航から追い越しをかけるためにアクセルを踏み込んでも、ガソリンエンジン特有の高回転の伸びを備えているうえ、今回、非力なBSG(ベルト・スターター・ジェネレーター)ではあるけれどハイブリッド方式を採用しているので、トルクが必要な状況では“ちょい押し”をしてくれる。6速ATとの相性も良い。

 一般道でも同様で、交通量の多い道路をトロトロ走るような状況でもアクセルワークにより自由自在のコントロールができるからストレスを感じない。

 高速道路も一般道路もある意味、何も考えずに「タラ~」と走れるのが、SKYACTIV-Xの良さだ。だから、長距離を走っても疲れない。

 そして、この滑らかな走りを昇華させてくれるのが、静粛性の高さだ。

 基本的にノッキングの原因になる混合気の自着火がずっと続いている状態だからエンジン音は大きくなる傾向にある。にもかかわらず、実際に走行すると車両の遮音性が高く、室内はとても静か。

 これはエンジン全体をカプセルみたいに覆っている樹脂製のカバーが大きく貢献しているのだろう。だから、エンジンの音はアクセルを強く踏み込んで加速したときぐらいしか明確に聞こえないし、かといって、ハイブリッドや電気自動車のように電気モーターの音がするわけでもない。

「今、自分がどういうクルマを運転しているかわからなくなる」くらい、とても不思議な感覚に陥った。

SKYACTIV-Xのエンジンルーム。カプセルのように覆っているエンジンカバーは遮音性に優れるとともに、保温効果もある。
SKYACTIV-Xのエンジンルーム。カプセルのように覆っているエンジンカバーは遮音性に優れるとともに、保温効果もある。

■ドライバビリティの評価軸で価格を支払う時代へ

 冒頭で述べたように、CX-30の売上は順調だが、残念ながらSKYACTIV-X搭載モデルは苦戦を強いられている。

 販売からまもなく1年が経とうしているが、国内におけるパワートレインの比率では5%と低調だ。

 その理由は、SKYACTIV-G 2.0より約70万円高い価格設定が影響していると思われる(一部メディアによる風評被害もあると思うが)。スポーツカーのような圧倒的な加速感や、燃費が抜群にいいといった、コストに見合った記号性のあるわかりやすい付加価値が少ないのは確か。

 ゼロ発進からアクセルを踏んでいくと、よくも悪くもガソリンエンジンとディーゼルのちょうど中間の出力特性だし、WLTC燃費モードも16.8km/Lとハイブリッド車のような驚くほどの燃費を発揮するわけではない。

 しかし、CX-30の魅力は、革新的なエンジンだけではない。新しいプラットフォームが実に具合がいい。振動が巧みに抑えられており、何より乗り心地がいい。

 ボディ剛性も高く、コーナリングのトレース感などハンドリング性能は秀逸。まさに「人馬一体」とはこのことで、意のままに操れるシャシー性能とSKYACTIV-Xの組み合わせは、ワンランク上の質感がある。

 いや、こう書くと安い褒め言葉に思われるかもしれない。SKYACTIV-X搭載モデルのCX-30の真骨頂は、あえてドライバーに対して主張をしてこない点ではないだろうか。

 細部にわたってファインチューニングが施されているから、運転をしていてストレスを感じさせない気持ち良さがある。この素晴らしいドライバビリティが充分で、輸入車のそれと比較してもまったくヒケをとらない。

 パワーや燃費にそうするように、これからの時代は、ドライバビリティという評価軸に対してもお金を支払うことの意味を伝えるべきではないか。CX-30とSKYACTIV-Xに乗ってそう思った。

マツダ CX-30の開発主査である佐賀尚人氏。CX-30デビュー後も、さまざまな知見が開発から上がってきているという。マイナーチェンジ(マツダは年次改良と呼ぶ)で、どのようにグレードアップされるから楽しみだ。
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この体験会では、道中、さまざまなイベントが仕込まれていた。ふるさと体験館きそふくしまでは、木工体験としてバターナイフを製作。
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信州と言えば、蕎麦! 蕎麦打ちはコロナの関係で体験できず残念だったが、蕎麦切りや湯搔きを体験した。
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■マツダ CX-30 X PROACTIVE 主要諸元表

車体
全長×全幅×全高 4395mm×1795mm×1540mm
ホイールベース 2655mm
車両重量 1490kg
タイヤサイズ 215/55R18
エンジン形式 SKYACTIV-X 2.0リッター直列4気筒DOHCスーパーチャージャー+Mild Hybrid
エンジン型式 HF-VPH型
総排気量 1997cc
ボア×ストローク 83.5mm×91.2mm
最高出力 132kW(180ps)/6000rpm
最大トルク 224Nm/3000rpm
燃料供給 筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料 プレミアム

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