更新日: 2022.12.20 16:23
ニッサン・サクラ/ミツビシeKクロスEVの大賞で時代は変わるかもしれない【世良耕太が2022-23日本カー・オブ・ザ・イヤーを振り返る】
■IONIQ5、iXの輸入電気自動車が魅せた、EVにプラスする“特別感”
最も得点の高かった輸入車に与えられる『2022-2023 インポート・カー・オブ・ザ・イヤー』は、BEVのヒョンデ IONIQ 5が受賞した。筆者はデザイン部門で投票したのだが、イヤーカーでの選出は順当だと感じている。授賞理由に「革新的なエクステリア/インテリアデザイン」が挙げられているが、IONIQ 5の最大の特徴は、BEVである以前に、目を奪わずにはいられない特徴的なデザインにあると感じている。
何度か試乗する機会を得たが、道行く人や後続車からスマホ(のレンズ)を向けられた経験は度々。室内を覗き込んだ人から感嘆の声を浴びたこともあった。そんなクルマ、なかなかない(のだが、筆者がデザイン部門で投票したトヨタ・クラウンでも同様の体験をした)。
『2022-2023 デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー』はBMW iXが受賞した。iXもBEVで、本賞を受賞したニッサン・サクラ/ミツビシeKクロスEVとは対極のポジションにある。ニッサン・サクラ/ミツビシeKクロスEVが生活に密着したBEVなら、iXは新世代のラグジュアリーカー像を提示するBEVだ。
ラグジュアリーであることを評価する尺度のひとつに静粛性の高さを挙げることができる。BEVの圧倒的な静粛性の高さは、エンジンを搭載したクルマでは実現しえない。iXはBEVならではの静粛性の高さに輪を掛けて、デザインと技術で先進的、かつ未来を感じる新しいラグジュアリー像を提示している。授賞理由に「優雅なインテリアについても従来の自動車の概念を覆す」とあるが、まさにそのとおりだ。
『2022-2023 テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー』は、シリーズハイブリッドシステムのe-POWERを搭載するニッサン・エクストレイルが受賞した。本賞を含めてすべての部門に言えることだが、筆者は悩みに悩んで選択し、配点した。筆者はこの部門にマツダCX-60 e-SKYACTIV Dを選んだ。理想の燃焼にさらに近づき、力強い走りと驚異的な燃費を実現する、新開発の3.3リッター直列6気筒ディーゼルエンジンの“技術“を評価しての投票である。
技術好きを自認する筆者が、エクストレイルが搭載する可変圧縮比エンジンを評価しないワケがない。むしろ、大好物である。圧縮比を連続可変で制御する独自の機構を採用し、燃費と出力の両立を図ったこのエンジンを発電専用に用いるなんて、贅沢の極みだ(北米にはエンジン車の設定がある)。
フロントに加えてリヤに搭載する高出力モーターを制駆動時に制御することで車両姿勢を制御するe-4ORCE(イー・フォース)は、クルマの走りに新たな価値を生んでいると感じる。テクノロジー部門での受賞は順当だ。
本賞と各部門賞合わせて6部門のうち4部門をBEVが占めたのは、2022年という年をよく表していると思う。後から振り返ったときに2022年は“BEV元年”と言われる年になるかもしれない。
2023年以降も、ノミネート車のうち一定の割合をBEVが占めることになるだろう。本年度の受賞車が示すように、賞を受賞するにはただ電気で走るだけではなく、何か突出した特徴が必要だ。それが何なのか、自動車メーカーの回答を楽しみに待ちたい。
いっぽうで、エンジンに関する技術が目立ってもいる。BEV以外で受賞したホンダ・シビックe:HEVとニッサン・エクストレイルは、いずれもハイブリッドシステムを搭載しており、技術的に特徴のあるエンジンを搭載している。
惜しくも受賞を逃したが、マツダCX-60 e-SKYACTIV Dもエンジンの技術が評価されて、筆者以外からも票を集めた。また、インポート・カー・オブ・ザ・イヤーでは僅差でヒョンデ IONIQ5に破れた格好となったが、ルノー・アルカナは、楽しい走りと良好な燃費を実現する独創的なハイブリッド技術をセールスポイントとしている(筆者は本賞部門で配点した)。
世の中BEV一辺倒ではなく、エンジン単独の技術、あるいはエンジンと電動化技術を組み合わせたハイブリッド技術にも進化の余地があることを上記のモデルは示した。2023年もエンジンとハイブリッド技術の進化に期待したい。