「静かさと豊かなパワー、乗り心地はまるでEV」/ニッサン新型セレナe-POWER試乗
今回、試乗したのは、新グレードの『LUXION(ルキシオン)』だ。e-POWERの最上級グレードで、プロパイロット2.0、プロパイロットパーキング(メモリー機能付)、プロパイロットリモートパーキングを標準装備。静粛性をさらに高めるため、フロントガラスだけでなく前席ドアガラスにも遮音ガラスを採用している。
運転席に乗り込んだ際に新しさを最も強く感じるのは、ニッサン車初となるボタン式のシフターだろう。見た目のすっきり感が増しているだけでなく、通常のシフターよりスペースを取らないため、運転席↔助手席の移動の際に邪魔にならないといった効能もある。操作性については慣れが解決してくれそうだ。
新型セレナのe-POWERで印象に残ったのは、圧倒的な静けさとアクセルペダルを踏み込めば期待通りに湧き上がる豊かな力である。正直、先代『セレナe-POWER』は力不足だった。「もうちょっと出てくれないかなぁ」とアクセルペダルを踏み増すと、発電用エンジンが高回転まで回って騒々しさが増した。望み通りの力が出るまでにラグがあるので、それがストレスにつながったりもした。
新型はストレスをまったく感じない。バッテリーに残量が充分あり、強い加速を求めない状況ではバッテリーに蓄えた電気エネルギーでモーターを駆動し、走る。この状況では電気自動車(BEV)と同じフィーリングだ。
ただし、BEVほどバッテリーを積んでおらず、すぐエネルギーを使い切ってしまうので、発電用エンジンを始動して電気エネルギーを補充する必要がある。定速走行時にエンジンをかけたのでは音が目立って快適なドライブの邪魔をするので、ある程度車速が上がって走行音が大きくなったところでしれっとエンジンを始動させる。
この制御は先代でも取り入れていたが、新型はより洗練されている。前型の定点発電点は2000rpm(低速)と2400rpm(中高速)の2段階だったが、新型は1600rpm(低速)、2000rpm(中速)、2400rpm(高速)の3段階だ。例えば50km/hで走行しているとき、前型は2400rpmで定点発電を行っていたが、新型は2000rpmである。耳障りなノイズの面で、400rpmの違いは大きい。遮音の徹底もあり、静粛性はさらに高くなっている。
定点発電点のエンジン回転数を低くしてしまうと発電量も低下してしまうが、それを補うためもあり、新型セレナのe-POWERは排気量を引き上げた。先代はHR12DE型の1.2リッター直列3気筒自然吸気エンジンを搭載していたが、新型は新開発のHR14DDe型、1.4リッター自然吸気エンジンを搭載している。発電専用に特化することで、効率を高めることができた。
さらに、バランサーシャフトやフレキシブルフライホイールの採用などで、エンジンがかかった際の振動を大きく低減させている。大げさではなく、普段使いのシチュエーションでエンジンの存在を意識することはない。前述したように、乗っている感じはまるでBEVだ。走行用モーターのパワーが引き上げられている(100kW→120kW)ことと発電用エンジンの発電能力(62kW→72kW)が引き上げられていることもあり、パワー面でも不足は感じない。
だから、ロングドライブ(例えばサーキットへの行き帰り)でのストレスは大きく軽減される。移動中のストレスをもっと軽減させるのがプロパイロット2.0だ。アクセル、ブレーキ、ステアリングの操作をクルマ任せにできるとなんと楽なのだと、一度味わったらクセになるだろう。サーキットに向かう際は、現地に着いてからの体力を温存しておくことができるし(家族と一緒なら、現地で家族時間を楽しめる)、帰路もロングドライブが苦にならない。
BEV顔負けの高い静粛性が実現しているので、車内での乗員同士の会話にストレスがないのもいい。新型セレナe-POWER(とくにルキシオン)は、家族時間を楽しむのにうってつけの1台だ。